強くて、弱い人 (2)
再び長い沈黙が訪れた。
なんと返事をすれば良いのか分からない。
というよりも、急に《もうすぐ死ぬんだ》なんて言われても、その言葉をすぐに呑み込むなんてできるはずもない。
あんなに元気そうに見えるのに、もうすぐ死んでしまうのか?
今、僕の目の前に立っている彼女は華奢で、よく見ると手や足が骨ばっている。
ただそういう体型なのだろうと思っていたが、この華奢さも、実は病気のせいだったのか?
顔を上げると、寂しそうに微笑んでいる麗と目が合った。
『ごめんね、優』
麗は眉毛を八の字にして、申し訳なさそうに謝った。
なぜ麗が謝るのか、意味がわからない。
「……麗は、死ぬことが怖くないの?僕は、僕は麗がいなくなるのが怖い」
回らない思考で、やっとのことで絞り出した言葉がそれだった。
視界がぼやける。
でも今だけは流すまいと、震える唇を噛み締め必死に耐えた。
麗は、うーんと少し考え込んでいた。
そして、静かに言葉を紡ぎ始めた。
『……人はいつか、みんな死ぬ。それは今かもしれないし、明日かもしれない。この世界にいる誰だって、動物だって、虫さえも、今日を無事に過ごせる保証なんてない。ただ、私には皆よりちょっとだけ早い死が、既に見えてるだけ』
まるで生きることを諦めたかのような言葉。
いや、もう諦めているのか。
その言葉はあまりにも残酷な気がした。
僕はその言葉に、どう返したら良いか分からなかった。
『そう、思ってたんだけど、、』
麗が静かに口を開いた。
そう、思ってた?
『やっぱり死ぬのは怖いね。心臓が止まるってどんななんだろうとか考えると、もうなんか震えてきちゃって』
『……だから私は考えないようにしてただけなんだって、気づいちゃったんだよね』
麗は苦笑しながらそう言った。
『自分の死から目を背けて、大丈夫だって、装ってるだけ。呆れるでしょ?散々優には色々言ってきたのに、結局私は逃げてるだけって』
自嘲するように麗は続けた。
呆れてなんかいない。
麗は強い人だって、それに、麗は逃げてなんかいないって、そう伝えたいのに言葉が出てこない。
どうやってこの気持ちを伝えれば、過不足なく麗に伝えられるのかが分からない。
僕は俯いて黙ったままだ。
『ごめんね。急にこんなこと言って。……そろそろ帰ろうか』




