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強くて、弱い人 (1)





定食屋から海まではそう遠くはなく、30分ほどで到着した。



砂浜に辿り着くために階段を下りる。


その間も、麗はずっと口を開かないままだった。




砂浜に下り、2人でゆっくりと並んで歩く。


ふと、麗が歩みを止めた。




「麗?」




僕は麗の方に振り返った。


なんだか定食屋を出てからの麗は変だ。


いつもはずっと口を開いているのに、さっきから一言も喋っていない。


そう考えていたら、唐突に麗が口を開いた。



そして、紡ぎ出された言葉を聞いた時、僕は自分の耳を疑った。






『わたしね、もうすぐ死ぬんだ』





「は?……」






いきなりすぎて、変な声が出た。



いやいやいや、嘘だろ?


きっとタチの悪い冗談だろうと思い、麗の顔を見る。




僕は、満面のしてやったり顔で笑顔の麗がいることを期待した。




しかし、麗の顔は真剣そのものだった。



とても嘘を言っているようには見えない。



いや、そもそも麗はそんな嘘をつくような人では無かった。




麗の衝撃的な発言を、容易く整理できるほど僕は賢くない。






「それ、本当なの?」






僕は恐る恐る口を開いた。





麗は少しの間を空け、僕の目を見てはっきりと言った。





『うん。本当だよ。病気なの、不治の病ってやつ』





そう言った麗は、少し寂しそうに微笑んでいた。




僕はその瞬間、何も考えられなくなった。


頭が真っ白になるということは、きっとこういうことを言うんだろう。




僕らの間に、長い沈黙が訪れた。


波が押し寄せては、引いていく。


その音だけが、辺りに響く。




少しずつ現実に引き戻されていく。


麗の言葉を、信じたくない。


その時、麗は僕の中でとても大きな存在になっていることに気がついた。





この長い沈黙を破ったのは麗だった。





『本当はね、このことを優に話すつもりはなかったの。でも優の過去を知って、抱えているものを知って、私がいなくなったら、きっと優は自分のせいだと思うと思ったの。自分を責めて、また優を傷つけてしまうかもしれないって』




そこで1度、麗は言葉を切った。


麗はとても穏やかな声で僕に語りかける。





『だから私もちゃんと優に向き合わなきゃって。今日、全てが終わったら、この事を話すつもりで優に会いに来た』





僕の目を真っ直ぐと見つめる麗の瞳に吸い込まれそうだ。



どうして麗なのか。


こんなにも他人を思いやれて優しいひとが。


身も心も美しいという言葉を体現したかのような人が。



僕の周りでは、心が綺麗な人ばかりが死んでいく。


なぜ?


なぜ心が汚れている人ほど甘い蜜を吸う?


今でも、幸せそうに笑っている?


他人の苦しみを理解しなければならない人ほど。


なぜ??



僕には全く分からなかった。




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