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許すこと、許されること (6)




目頭がじわっと熱くなる。


麗の言葉は熱した鉄球が氷を貫通するように、僕の心をえぐる。





ああ、なんでいつもいつも、麗は僕の欲しい言葉をくれるのだろう。





本当は、誠と母さんを死なせてしまったこんな僕でも、大丈夫だよと、誰かに受け入れて欲しかったんだ。



麗の真っ直ぐで、それゆえに嘘偽りを感じさせない言葉が僕にそのことを自覚させた。




出会ってからたった2ヶ月しか経っていないのに、どうして麗はこんなにも僕に温もりをくれるのだろう。



堪えていた涙が目の端から流れ落ちた。


麗と出会ってから僕は泣いてばかりだ。




麗は僕を優しく包み込み、僕の背中をさする。


麗の温かさに、さらに涙が止まらなくなる。





『……優。もう、自分を許してあげよう?』




耳元で麗が呟いた。


優しい、僕の心にすっと染み入るような声で。




自分を、許す。




「……僕に、できるかなあ」




その声は涙のせいでかすれていて、震えていて。


みっともない声だったと思う。


それでも、麗にはちゃんと届いてくれていると思う。



いつも麗は、僕がどんなにみっともなくても情けなくても、僕に向き合ってくれる。


僕たちの間に特別ななにかがある訳では無い。


けれども麗はどこまでも温かい。


無条件の優しさなんてどこにも存在しないと思っていたのに。


麗はいつも僕の常識を簡単に覆してくる。






『できるよ、きっと。……優になら。だって、こんなに優しくて強い人だもん』





「……僕は強くない」





麗は困ったように笑った。





『……あのね、優。私は弱さと強さは紙一重なんだと思う。優は弱さを自覚して、それを理解して受け入れてる。そんなこと、誰にでもできる訳じゃない。それができてる優は強いよ』





麗のその言葉が僕の心に重く響く。



弱さと強さは紙一重。


弱いから強い、強いから弱い。



大きな矛盾を抱えているように思えるこの言葉。



しかし麗から紡ぎ出されるその温かく優しい声には妙な説得力があった。



もう一度、ゆっくりと麗が口を開く。




『一気にじゃなくていい。ゆっくり、少しずつでいいから、自分を許していってみない?』





ずっと、誠と母さんに許されることだけをを考えてきた。


だから自分で自分を許すなんて考えてもいなかった。




でももし、麗の言うように時間をかけてもいいから、完全じゃなくてもいいから、自分を許すことが出来たら、僕は僕でいられるのだろうか。


僕は僕を、見失わずにいられるだろうか。



麗の手が僕の頭を優しく撫でた。


その優しさにつられるようにして、僕は麗の腕の中で、ゆっくりと静かに頷いた。



これにて、長らく続いた「許すこと、許されること」編終了です。

自分を許すことは他人を許すことよりも遥かに難しいと思います。

それでも彼は自分を許そうと努力することを選択しました。彼には幸せになって欲しいです。

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