許すこと、許されること (4)
お参りが終わったあとも、しばらく僕は誠のお墓を見つめていた。
この言葉が誠に届いていたとして、誠はどんな気持ちになるのだろう。
僕は以前よりも心が軽くなったが、誠は?
怒ってる?
不安に思っている?
安心している?
皆目見当がつかない。
このお墓参りが、ただの自己満足で終わってしまうことが少しだけ、怖かった。
今更ながら、誠の気持ちを聞けないまま、一方通行の想いを伝えた(もとい押し付けた)ことを後悔しそうだ。
気づかないうちに唇を噛み締めていたようで、口の中にじわっと血の味が広がった。
鉄臭い匂いが鼻を通る。
『……後悔、してる?』
麗の声に、はっと我に返った。
隣を見ると、心配そうに僕を見る麗と目が合った。
あまりにも真っ直ぐに僕を見つめる麗の目が、僕のすべてを見透かしているようで、咄嗟に目を逸らして立ち上がった。
「そんなのしてないよ。……全部伝えられて、すっきりしてる」
この動揺を悟られまいと、僕は誠と麗に背を向け、この場から去ろうと歩き出した。
後ろから麗の足音が聞こえてくる。
ただ、何も言わずに後を着いてきてくれるのは、きっと僕に気を使ってくれているのだろう。
そのままお互い無言で歩き続け、お墓が立ち並んでいる所から随分遠くまで来た時、僕は唐突に立ち止まった。
『……優?』
麗が心配そうに僕の名前を呼ぶ。
僕は自分の拳をぎゅっと握り締めた。
「……本当は、少し、後悔してる」
どうして今僕はこんなことを口走っているのか、自分でも分からなかった。
つい先程まで、麗に全てを見透かされるのが怖くて逃げていたはずなのに。
なぜか口が勝手に動いて、止まらない。
「誠はもう僕に何も伝えれない。僕だけが一方的に思いをぶつけて、自己完結させようとしてる。とても自分勝手だ」
麗は何も言わない。
僕は前を向いているので、後ろにいる麗が今どんな顔をしていて、どんな気持ちになっているのか想像がつかない。
そのまま僕は言葉を続ける。
「……でも、さっきあいつの墓の前でさ、唇から血が出たんだ。多分気づかないうちに噛み締めてたんだと思う。口の中に血の味と鉄臭い匂いがして、その時思っちゃったんだよ」
言葉を切り、握りしめていた拳を脱力させた。
「ああ、僕は今生きてるんだって。誠はもうこの世にいないけれど、僕はいるんだ。……幸せになりたい、って。一方的に伝えたことを後悔しておきながら、こんなことを思ってるなんて、僕は最低だ。卑怯で、弱くて、ずるい」
麗からの応答はなく、しばらく無言の時間が続いた。
大学が思ったより忙しく、だいぶ間が空いてしまいすみません( ; . ;)




