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人をシアワセにする能力者  作者: 夜月桜 麗
5/5

能力管理局

「そ、そんなこと、なんで知ってるんだよ」

きっとデタラメに決まってる、真に受けちゃだめだ。

「それはおじさんが能力管理局の者だからだよ」

「能力管理局?」

「そうさ、国の能力者たちの能力データの情報の扱いを国に任されている団体だ。おじさんは能力で顔と名前と能力を記憶してるから、すれ違う人の顔見て情報をすぐ思い出しちゃう癖があるんだよね、職業病かなぁ」

胡散臭いように見えるが、なんとなく嘘をついているようには見えない気がした。

「で、俺を管理するってどういうことだよ」

「野放しにしてたらまた誰か死んじゃうでしょ?だから、上手く扱えるようになるまでおじさんたちの施設に来てくれないかな?ああ、安心して、保護者には許可得てるからね。ほら、ここにサインがあるだろう?」

男が取り出した1枚のプリントにはしっかりと親の筆跡が。

「・・・・・わかりました。着いていきます」

こうして謎の施設に僕は連れていかれることになった。




「さぁ、ここだ」

男は街の離れたところにあったマンホールを退けた。その中は暗闇に包まれていた。

「足を滑らせないように気をつけろ」

僕は恐る恐るハシゴを降りていった。

真っ暗で不気味だ。底なし沼みたいだ。

やがて足が地面についた。

「ちょっと待ってろ〜」

黒スーツの男、美羽さんはライターの火を付けて壁を照らした。スイッチを見つけると、カチッと押す。暗闇が小さなオレンジ色の光に包まれた。

「臭いは酷いが、我慢してくれ」

僕は鼻を摘んでゆっくりと進む。

やがて見えてきたのは大きな鉄の扉だ。

美羽さんは胸ポケットからカードを取り出しスキャンした。するとガシャンという音が響いて鉄の扉がゆっくりと開いた。中は廃れたエレベーターという感じだ。

「ほら、これに乗れば着くから」

僕はこれから連れていかれる場所がどんな場所なのか考えながらエレベーターに乗った。

ガシャンと扉が閉まり、エレベーターがゆっくり動き始めた。現代の世界に、こんな古びたエレベーターがあることに驚いた。「このエレベーターというか、この地下の空間は大昔戦争していたときの跡地みたいな場所だ。何者が作ったのかは知らんがこうして今も起動するということは、無能力者ではなく能力者が作ったのだろう」

少し驚いていた僕に美羽さんが教えてくれた。

「そうなんですね」

会話が途絶え、沈黙の時間が続いた。





エレベーターの動きが止まり、ガシャンとまた音がして扉が開いた。

エレベーターから降りると、地上とは違う世界がそこには広がっていた。

「きっとお前は施設と聞いて刑務所みたいなのを想像したかもしれない、ここはそんなに悪いところじゃない。能力を上手く扱えない者や強すぎる者が通う学校みたいなもんだ」

視界に入ったのはたくさんの光だ、その光の正体は家だ。中心には大きな学校のような建物と広い校庭がある。

「あの家はほとんど寮だ。子供から大人まで、能力者が集ってる。そんであのデカイ建物は能力管理局本部であり、能力者達が通う場所だ。一旦本部に報告しなきゃならない、おじさんにしっかり着いてこいよな」



デカイ建物、管理局本部の裏口にたどり着いた。美羽さんは咳払いを1つし、扉の近くにあるマイクに向かって言った。


「美羽 映三です。例の『人をシアワセにする能力者』を連れてきました」


ガチャンと鍵が空く音がした。

僕と美羽さんは本部の中へと入った。

複雑な通路を進み、今度は現代の綺麗なエレベーターに乗り、ドラマでよくみる社長室みたいなところにきた。

「草野叶くん、よく来てくれた。私は能力管理局の首領の宮上涼介という。」

ゲーミングチェアのような椅子に髭を生やした細身の男性が座っていた。

「突然のことで本当に申し訳ない。君の能力はかなり危険であり、周りの人を死なせてしまう。だからその能力を研究させてくれないかな?能力を上手く使いこなせるようになれば、君はもう苦しまなくて済むはずだ。どうだい?悪い話ではないだろう?」

確かに、悪い話ではない。僕は大切な人を失った。僕のせいだ。もう、誰も死なせたくない。それに、国に任されているんだ、悪い集団ではなさそうだ。

「・・・わかりました、ここでお世話になります。けど、本当に僕の両親がサインを書いたかだけは確認したいので電話をしてもよろしいでしょうか」

「ああ、構わないよ」

僕は母さんに電話をかけた。

結果は、サインしたとのことだ。僕の能力の詳細がわかって怖くなったのだろう、なんとなくいつもより冷たい気がした。でもしょうがないだろう、人を無意識にのうちに死なせる能力を息子が持っているんだ、いつ自分が死ぬか恐ろしくなるに決まってるか。

「じゃあ草野くん、このプリントをよく読んでサインしてくれ」

「わかりました」

僕は貰った紙に目をしっかり通してサインをし、宮上さんに渡した。

「ようこそ、能力者の学園へ───」

僕の暗くなった人生が、変わるような予感がした。

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