僕の能力。
「・・・は?」
目の前で倒れた男はピクリとも動かなくなった。
「・・・お、おい?」
なんで何も答えないんだよ?
なんで、急に倒れたんだよ。
「そ、そうだ、救急車!!」
僕は急いで119番を打ち込み、電話をかけた。スマホを持つ手が震えているのがわかる。冷や汗が止まらない。
『はい、119番です、どうされました?』
「ひ、人が急に倒れて────」
そのあとは記憶が曖昧だった。
男は死んだ。ただ、それだけが分かった。
なんで、急に死んだのかは説明されなかった。されてたとしても、僕はあまり聞いていなかった。人が目の前で死んだ事実だけが頭に残っていた。
「これから、どうしよう。僕、小鈴の為に生きてきたのに」
復讐する前に目の前で犯人が亡くなった。
もう、生きる意味あんのかな・・・。
僕、どうすりゃいいのかな・・・。
「こんな能力、持っていたってなんもならないじゃないか・・・何が幸せにする能力だ、小鈴は死んじまったじゃねぇかよ」
歩道橋をトボトボ歩きながらに僕は言葉を吐いていた。
そのときだった、目の前に黒いスーツを着た男が目の前に現れた。そして僕を見て言った。
「草野叶くんかな?」
「・・・誰だよあんた」
黒スーツの男は僕をじろじろと見てから言った。
「君が『人をシアワセにする』能力者だね?」
「おいだから誰だよ」
「おっと、君の能力危険だから名乗らせて頂くよ。おじさんは美羽 映三。能力は『全てを記憶する』能力だよ。」
「ほーん、で、何の用ですか」
胸糞悪いのにこんなやつに絡まれるとか最悪すぎる。早く帰らせてくれ・・・。
「君の能力、危険だからおじさん達が君を管理することになったんだ」
「は?どういうことだ?」
僕の能力が危険???
そんなはずないだろう。幸せにするだけだぞ。
「あれ?君、自分の能力が何だかわかってないの?」
「え?人を幸せにする能力だが?それで父さんの仕事も上手くいって・・・」
「違うね。」
「は?」
何を言っているんだこいつは。
僕は黒スーツの男を睨みつけた。
「まぁまぁ落ち着いて。それは表上の能力だ。でも、君の裏の能力は死合わせにする能力。つまり、人を死なせる能力なんだよ」
「・・・え」
人を死なせる?
じゃあ小鈴は僕のせいで死んだのか?
あの日、喧嘩したから。そんで、犯人も俺が死なせたのか?
呼吸が荒くなっていくのがわかる。
苦しい。辛い。
「そう、君は幸せも不幸せも併せ持つ『人をシアワセにする』能力者なんだよ」