4,中学生編『おざわ』
あいつはやばかったなぁ。
たぶん、サイコパスだった。
あれは中2の冬だったかな。
クラスは違うが同じ陸上部であった。
『おざわ』は同じ学年の中で1位2位を争うほどに足が速かった。
ちなみに双子だ。
兄だったか弟だったか忘れたが、同じ顔がバスケ部にもいた。
そして頭も良かった。
当然喋る機会も多く、仲は良かった。
ただそれまでだ。
特に恋愛感情があった訳でもない。
そう。ただの友達だった。
が、ある日突然変わってしまった。
何が起こったのかさっぱり分からない。
ちなみに今でも誰もよく分かっていない。
急に求愛行動をしだしたのだ。
そう。ゆうに。
メールは元々毎日していた。
メル友はかなり多かったのでその中のひとりだったけどね。
そのメールの内容が変わり始めたのだ。
おざわ「おはよう☀ゆう(^^)今日も会えるの楽しみにしてるよ(o^^o)」
????
毎日学校に行くのだから今日も会えるのは普通だろう。
おざわ「おかえり(^^)今日も可愛かったね(o^^o)(o^^o)これからお風呂かな?ゆっくり浸かってきてね(^^♪」
?????
なんだ急に。なぜ褒める。
おざわ「大好きなゆうにはやく逢いたいよ(´×ω×`)明日が待ち遠しい(T ^ T)」
??????
大好き?逢いたい?
何を言ってんだこいつは。
普通に友達だったのに、急にメールの内容がおかしくなり始めたのだ。
マジで、引いたね。
うん。当時友達にも見せたけど、全力で引いてた。
そして遂には、
おざわ「ゆう!!好きだ!!!付き合おう!!」
おざわ「あー今日もゆう可愛かったなぁ(^^)うん!付き合おうか!」
おざわ「そろそろ寝ようかなぁ(´-`).。oO()ゆう大好きだよ(^^)付き合って(o^^o)」
おざわ「おはよう☀ゆうのこと好きすぎて今日夢に出てきたよ(^^♪ゆう!付き合おう(o^^o)」
…。
こんな感じで内容関係なくやたらめったらと付き合おう付き合おうって言ってくるようになったのだ。
かなり適当にあしらっていたのに、なっかなか折れないんだなぁこれが。
そんな日々がしばらく続く訳だが。。。
いやぁ。慣れって怖いね。
これが異常というのが薄れていき、だんだんこう思うようになってきた。
”こんなにもゆうのこと好きな人なら幸せにしてもらえるのではないか”
たしかに、いつも優しかったし、悪いやつではなかった。
おざわ「今は俺の事好きじゃなくても、俺が絶対好きにさせるから。」
この言葉から、遂にゆうが折れてしまったのだ。
今思えばまるで洗脳のようだな。笑
おざわと付き合い始めた。
付き合ってからもおざわは、相変わらず好きだの可愛いだの、
そういう言葉をよく口にした。
嫌な気持ちにはならなかった。
おざわの家は学校から徒歩5分ほど。
ゆうの家のが遠いのに、毎日家まで送ってくれた。
朝も迎えに来るって言われたが、さすがにそれはお断りした。
ほんとに良い奴だった。
ハグもちゅーも、おざわが初めてだった。
今でも覚えてる。
おざわが家まで送ってくれた、ゆうの家の前。
また明日〜って言った時。
おざわ「ゆう。きて。」
おざわは、腕を広げていた。
ゆうはこの意味を知っていた。
昨日、メールで言われていたのだ。
ハグするから。と。
まさかほんとにするとは思ってなかった。
ゆうが戸惑っていると、
おざわ「ゆう。おいで。」
ずっと腕を広げ続けてくれてたおざわ。
ゆうは恐る恐る近づいた。
ゆうから触れることはなかった。
なにせ、チキンなもんで。
至近距離で立ち止まったゆう。
それをおざわが包み込む。
ゆうの心臓はバクバクしていた。
おざわはとても嬉しそうだった。
それからは、毎日帰り際にはハグをするようになった。
ハグに慣れてきた頃。
おざわからこんなメールが来た。
おざわ「明日キスしてもいい?」
当然、ゆうの返答はNOだ。
理由は簡単。恥ずかしいからだ。
ふと思い出す。
ハグの時もこんな感じだったっけな。
次の日の帰り道は、既にバクバクだった。
おざわも気付いていた。
おざわ「なんでそんなに緊張してるの?俺がキスするって言ったから?」
意地悪なやつだ。
聞かなくても分かってるだろうに。
そこから家に着くまでは、無言を貫き通した。
無言でいれば逃げ切れるだろうと思っていたからだ。
ゆうの家に着いた。
またあした。と言って、帰ろうとした。その時。
おざわ「ん。」
おざわは腕を広げていた。
そうか。さよならのハグをし忘れていた。
何も言わないってことはおざわは諦めたのか。
そう思い、ハグには慣れていたので、なんの迷いもなく近づいた。
ハグをして、そろそろ離れようと思った時。
おざわ「キスするって言ったよね?」
…。不覚だった。
てっきり今日は見逃されたとばかり思っていた。
嫌いだからいやな訳では無い。
恥ずかしいから嫌なのだ。
ゆうはまた、無言を貫き通した。
もちろん俯いたまま。
何分が過ぎただろうか。
おざわはゆうを離さない。
ゆうも無言で俯いたまま。
先に動いてしまったのはゆうだった。
チラッとおざわの顔をチラ見したのだ。
目が合った。
おざわはずっとゆうのことを見ていたのだ。
ゆうはそこからまた、無言で俯きだした。
すると今度はおざわが動き出す。
おざわ「ゆう?キスしていい?」
ゆうは首を横に振る。
おざわ「したい。だめ?」
ゆうは首を大きく縦に振る。
おざわ「なんでいやなの?」
ゆうはこたえる。「恥ずかしいからやだ」
おざわには恥ずかしがってるゆうが可愛くしか見えていなかったらしい。
ぎゅーっと抱きしめたあと、遂に、顎クイをされた。
漫画の世界の話かと思ってたけどほんとにあるのな。
おざわ「ゆう。目つぶって。」
ゆうは急いで目をつぶる。
至近距離で目を合わせるのは恥ずかしすぎるからだ。
次の瞬間。唇が唇に触れた。
すごく長く感じた。
実際は数秒だったのだろうが、ゆうには数時間に思えた。
唇が離れた瞬間、ゆうは再度無言で俯く。
おざわはとても嬉しそうだった。
少し経ってからおざわは、名残惜しそうにゆうを離してくれた。
懐かしいなぁ。
これが初キスの思い出か。。。
青春だなぁ。。。
が、ここで終わりではなかった。
そう。続きがあるのだ。
しばらくたったある日。
中3の春頃だったかな。
昨日まではいつも通りだった。
急に。別れを告げられた。
そう。あんなに溺愛されてたのに振られたのだ。
びっくりした。
まさか自分が振られると思わなかったのだ。
そして、別れるのを即答でOKした自分にもびっくりした。
別に元々好きだった訳でもない。
ただ、ゆうを好きで居続けてくれたおざわに、多少恋心は出ていた。
なんで振られたのかよく分からないまま月日がすぎると思いきや、
2日後。
復縁しようと言われた。
訳が分からなかった。
計100回ほど告白し、やっとの思いで手に入れたゆう。
それを一瞬で手放し、再度手に入れようとした。
ゆうはイラッとした。
意地でも復縁してやらん。
そう。復縁はしなかった。
付き合う前のようにまた、好きだの付き合ってくれだの言い始めた。
さすがに返信するのもやめた。
するとおざわは、手紙を書き出した。
なんと、3枚分の手紙に謝罪と、ゆうの好きなところがびっしり。
ちょっと恐怖を感じたね。
もちろん。友達にも見せたよ。
爆笑してた。
返信はしなかった。
しばらくして、おざわからの連絡は来なくなった。
おざわは諦めたのだろう。
ゆうが別の人と付き合い始めたから。
ちなみに、この手紙だけは今もまだ持っている。
将来ネタにしてやろうと思ってね。
本人は知らないだろうけど。