おいかりまいしすたー
どうぞ!
酒呑童子がやらかした為、必死に響にかける言葉を考える。何か響が納得する言い訳を言わないと…
「ひ、響……いやぁ実はだなぁ、道中困ってるお年寄りが荷物を重そうに持ってたから、代わりに持ってあげたんだ。あーお兄ちゃんは優しいなぁーははっ」
何とか捻り出したが、流石にこれは厳しいかもしれない。頼む響よ、許してくれと頭の中で願い続けていると、響は怒ったような顔をやめ、いつもの顔に戻る。
「そういう事なら……なぎにぃはやっぱり優しい」
「ああ。ありがとうな、響」
勝った!と心の中でガッツポーズを決める。これで一安心と思い、ふぅと一息つくのもつかの間、もっと厄介なものが隣にいたのを思い出す。
幸い、ドアのおかげでまだ響から酒呑童子は見えていない。いそぎもう一度不可視化しろと伝えようとしたが、酒呑童子がドアから顔を出す方が早かった。
「おお!お主が渚の妹か。中々可愛らしいのう!」
ひょこっとドアから姿を見せ、嬉しそうに話しかけてくる酒呑童子を見た瞬間、響は一瞬顔から感情を消し、その後顔を顰めた。
「なぎにぃ……?」
ギギギ、と効果音でも着きそうな動きで酒呑童子からこちらに視線を移し顔を向けてくる響。なにそれ怖い。
「ちょっと待ってください響さん。そう、落ち着いて……な?」
「……あなた、誰?」
視線を酒呑童子に戻し、響は指をさしながら誰なのか聞き出す。変なことは言わないでくれと祈るばかりだ。
「わしか?わしの名前は酒呑童子じゃ!響よ、よろしく頼むぞ!」
「ふーん…で、あなたはなぎにぃの何…?もしかして…カップル?」
「かっぷる?まぁ、多分それじゃ!」
「えっ……」
酒呑童子がおかしなことを口走り、響が驚き泣きそうな顔になりながらこちらを見てくるが、俺も泣きたい。何言ってるんだほんとにこいつは……
「なぎにぃ、響がいるから彼女いなくても寂しくないし、リア充なんて羨ましくないって……響が彼女になるって言ったらそれもいいかもなって言ってたのに……!なんで、なんでぇ……」
「ご、誤解だ!酒呑童子とはそんなんじゃないって!そもそもこいつは……」
「なぎにぃなんて……なぎにぃなんてもう知らない!嘘つき!……ぐすっ」
そう言い残した響は、俺の体を少し押し、ドアを閉めた。ガチャっという音が聞こえてきたので、おそらく鍵をしめたのだろう。
こんな事になった元凶である酒呑童子は、呑気に頭の後ろで手を組み、分からないという顔をしている。
「なんで響は怒っていたのじゃ……?むむむ……んー、分からぬのう……」
「次から次へとやらかしやがってほんとにもう……どうすんだよこれ……」
「そうじゃ渚、かっぷるとはなんなのじゃ?契約みたいなものか?」
「やっぱり分かってなかったのかよ……カップルはなぁ、あれだ。恋人同士、男女の関係って言えば分かるか?」
そう酒呑童子に教えると、理解したのかみるみるうちに顔が赤くなっていき、プルプルと震え出した。
「わ、わしと渚が恋人……?いや、決して心から嫌なわけではないんじゃが、まだそこまでではないし……のう……」
何かぶつぶつと呟いているが、何を言っているかは小さすぎて聞こえない。
そんな酒呑童子を尻目に、響が閉めたドアを見つめる。
どうやって誤解を解きつつ謝るか。その事で、今は頭がいっぱいだった。
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