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まさか

 南からその小さな基盤を受け取ったときによぎった「まさか」は的中していた。



 その日、父は忙しかったのか家に帰ってこなかったので、次の日の朝研究所でそれを見せた。


 「これ見てよ。」


 「なんだ?これは。」


 「南の部屋のタンスの引き出しの裏にくっついていたそうだ。それが何かお父さんなら確実に分かる気がして持ってきた。」


 「……まさか!?」


 (僕と同じ反応だ。なんかヤダな。

  …いや、それどころじゃない。)


 「僕もそう思った。まさかのまさかなのか?」


 「…うん。これはおそらく盗聴器だ。」


 父の顔が血の気が引いていくのが分かった。

 それから、父は何か引っかかっているのかずっと絶望しているような表情で考え込んでいた。「なにか思い当たりがあるのか?」と聞いてもまるで聞こえていない。


 (何か隠してるのか?)


 「おい、…。おい!!なにか知っているのか?」


 父はやっと気づいた。


 「いや、別にそういうわけじゃない……」


 「話せよ!隠してるだろ!南は僕の家族でもあるんだよ!」


 「だからどうした…、お前には関係ないんだ!」


 「…んは?なんだよ、関係ないって…ふざけんなよっ!!……」


 僕は、なぜか悔しさと怒りが込み上げてきて父の胸ぐらをつかんで壁に押さえつけた。

 でも、父は僕を押し返すこともせず、どこか悲しそうで、落ち着いていた。

 (あれ?僕はなんでこんなに怒ってるんだ?くっそ……落ち着け自分。)


 「……お願いだから…なんでもいいから…教えてくれよ…。お父さん。」


 「ふぅ……。分かった。一つだけ教えてやる。

  南は、たぶん俺たちも、何者かに監視されているんだ。しかも、かなり巧妙に。恐らく盗聴器だけじゃないだろうな。」


 「何者かって……。

  じゃあ、この盗聴器の通信先とか調べれば分かるんじゃないの?」


 「巧妙って言っただろ。かなり最先端のものだ。通信先などは分からないように、できているんだろう。一応これは、俺が預かっておく。

  お前は早く自分の研究室に行け。」


 「あぁ。」


 何者かに監視されている。

 僕は身の回りの人やものが怖くなった。一番怖いのは、南の身に何か起こることだった。



  *



 盗聴器。

 盗聴器とは、会話や通信などを、当人らに知られないようにそれらが発する音や声をひそかに聴取・録音する機械である。

 そう。盗聴器はどこかで通信を繋いで聞くか、録音して後で聞くか、どちらかである。

 僕は、すぐに録音は無いと思った。寮は人通りも少ないわけではなく、掃除なども入らない。そして、録音にしては機械自体が小さすぎる気がする。

 ここは、誰かが通信を繋いで聴取している、と考えるべきだろう。

 では、どこのどんな人物が盗聴しているのか。

 あの盗聴器はとにかく小さかった。恐らくそこまで遠くまで電波は飛ばないだろう。しかも、タンスの引き出しの裏にくっついていた。研究所内、少なくとも研究所の近くだろう。

 この研究所は最先端の研究も行っているので、警備もかなりきちんとしている。完全な部外者が、盗聴器を仕掛けるのは難しい。この研究所の関係者が関わっている可能性が高い。


 盗聴器の犯人は研究所の関係者!!


 僕は研究の仕事が終わってから、この研究所の関係者について調べてみた。

 そこそこ大きな研究所とは思っていたが、研修生を合わせると200人を超えるとは…。

 南が入ってきたのも最近だし、新しく入ってきた人だけを数えればいいとも思ったが、前からいる人にお金を渡して指示している可能性も高い。


 結局、犯人の検討はつかなかった。


 理由の一つとして、「何を盗聴しようとしたのか」が分からない、ということだ。


 それを知るために、今度は南について調べてみた。

 しかし、情報が空欄だらけだった。


 こうなったら、南に直接聞いてみるしかないのだろうか…。

 でも、できれば南にはこれ以上心配をかけたくなかった。


 最終的に、まだまだあると思われる盗聴器、もしくは盗撮器を見つける、という結論に至った。



 想像以上に手ごわい敵なのかもしれない…

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