血の戦争
そこに現れたのは父だった。
「お父さん……、なんでここが。」
「お前は、鷹丘研究所の……」
すぐさま鮫坂のリーダーは父に銃を向けた。
「危なっ……」
ダンダンダンッ
撃たれた。と思ったが、父は銃弾を華麗によけている。慣れているように、まるでつばしっこい小動物みたいに右へ左へ跳びまわっている。しかし、リーダーも負けずと父を狙い、木刀を撃ち抜いた。それと同時に父が銃を蹴り飛ばした。
僕はついこないだ父にあんなひどいことを言うほど恨んでいた後とはいえ、その父の姿に感動した。
父はうつむきながら落ちた銃を拾って胸の中にしまった。
「S-504……、確かお前はそんなコードネームだったよな。」
「そうだよ、お前はS-503だ。しかしなかなか、やるな。刀術の王。」
「何言ってるんだ。手抜いてるだろ。射撃の王。」
「お前だって。」
二人は知り合いらしい。少し場が和んだ気もしたが、父はすぐに真剣な顔に戻った。
「お前、軍隊のときのことを忘れたのか?どれだけ人を殺し、人が殺されたか。忘れたのか?」
数十年前に「血の戦争」と呼ばれる世界大戦があって、世界中で数千万人が犠牲となった。核兵器も使われた、ひどい戦争だった。我が国は優位に戦争を進め、周りの国を侵略し領土を倍に広げた。そのため、他の国の多くの一般市民も大勢殺した。
その戦争でひときわ活躍した二人の戦士がいた。一人は刀術、もう一人は射撃の王としてあがめられた。敵国では悪魔として恐れられた。「血の戦争」の最も残酷な戦いといわれる「南半島対人戦」があった。どこの国も資源と資力を使い果たし、兵車も戦闘機も軍艦も使われず、人と人が戦い合った。我が国は1000人で50万の連合国軍と戦わなければならなかった。一時間も持たずほとんどこっちの軍は全滅状態になった。しかし、その刀術の王と射撃の王が二人でその50万人の敵軍を打ち倒した。何十回とあった戦いの一つだで桁外れに多くの人が死んだ。それだけでは収まらず、さらに一般市民50万人を殺した。
我が国が勝ったわけではないが、この戦いでこの世界大戦は終わった。
現在、その刀術の王は僕の父、射撃の王は鮫坂研究所のリーダーとなっている。
「あんなの忘れられるわけないだろ。……必死に助けを求めていたお腹に赤ちゃんがいる母親も、まだ死なんてものを知らない純粋な子供たちも、……刺し殺して、撃ち殺して……」
リーダーは今にも泣きそうな顔で座り込んだ。
「そうだろ?だったら、上からの評価が欲しいからってなぜ兵器を作るんだっ?」
「そんな、そんなこと、分かってるっ!でも、その殺した人より大切な人がいるんだ!」
「なんだよそれっ!お前……、俺はあきれたよ。」
「……お前には分からないだろうが、こっちにも事情があるんだ。あのロボットを渡すことはできない。」
「どんな事情があろうと、阻止させてもらう。」
「では、こちらも遠慮せずにロボットを兵器として完成させる。もう手下が来る。今日のところは帰った方がいいぞ。」
「……翔介、行くぞ。」
「うん……」
二人ともにらみ合ったまま別れた。鮫坂研究所からは無事に逃げ出した。それから父にいろいろ話しかけたが意識はどこかへ飛んでいるようで何も話してくれなかった。
僕を助けに来た父のその背中は勇者みたいでかっこよかった。でも、それは血に染まった背中でもあったのだった。
連載中ですがよければ評価もお願いします。




