コーヒーブレイク6
「――――そんな訳で……フユノ様は、この世界カラーズの中にある亜人達が治める国であるパーステールに召喚された亜人の『守護者』様なのです」
俺は手で顔を覆うと「ふう」と溜め息を吐き俯いた。
「この話はまだ続くのかな……。はぁぁ、分かりました。この世界……カラーズでは人間の国ゲインズボロ王国があって、昔から亜人は迫害され奴隷のような扱いを受けていたと。そして人間から逃げて、ここにパーステール国を作り。結界を張って数百年ひっそりと暮らしていたと」
コクコクと頷きピコピコと耳を揺らすロロン。
「はい。ですが……人間が侵入して、世界樹様に攻撃するなんて……どうやって結界が張ってある国内に侵入できたのかは不明ですが。世界樹の葉を狙っての犯行だと思われます」
俺はスクッと立ち上がるとロロンの肩に手を置いた。なぜなら俺に説明しながらもフルフルと小刻みに揺れ……目には涙が溜まっている。美少女で獣耳ちゃんが泣いているのだ、優しく慰めない男は男じゃない!
(……テレビカメラは何処だ? こんな訳の分からない異世界転移物の設定に、驚いてるところで! プラカードが現るなんて全国ネットで恥ずかしいぜ! 俺は更に斜め上の柔軟に対応する男を演出するのさ)
ロロンがウルウルした顔で、俺に抱きついてきた。はぅぅ。破壊力がパナイ……。
フワッと甘い香りと柔らかな体に理性が飛びそうだったが、俺はもう一人の俺に集まる熱いなにかを押さえつつ、あくまで紳士を装う。
「落ちついて! ロロンさん、少し休んだほうがいいですよ」
カッコよく、そしてスマートに! 精神的に疲弊した美少女を休ませる『守護者』を演じようとした時だった!
俺が寝ていたベッドにエスコートしようとしたのだが、ロロンのローブは床を引きずるぐらい裾が長く。はい! お約束のごとく踏んづけましたし転びましたよ。
「痛たた……大丈夫ですか、ロ、ロん……むう」
柔らかい。素晴らしく柔らかくて甘い香りと温もりに俺の顔が挟まれた。
「ちょ……あっ、動かさないで……フユノさ、ま、あっあ、あんそこは? えっ? にんげん?」
少し汗ばんだ顔がピンクにほんのり染まるりプルプル、ワナワナと震えるロロン。ワナワナ?
「頭! 頭!」
ロロンが嫌なものでも見るように連呼する。俺も頭? と思い触ってみると、なんてことはない! 某有名鼠の耳付き帽子がおっぱイに挟まった拍子に取れただけのことだ。
「ああ、すみません。帽子が取れちゃいましたね。設定上マズイかな」
至福の柔らかさから、無理矢理に引き剥がされた俺の顔。涙が溜まった瞳から厳しい視線を俺にぶつけ白い肌を自ら抱いて隠すロロン。ああ眼福よ、さらば。
「……人間? あなた人間なの? よくも、よくも騙してくれましたね……しかも、うううっ、裸まで……見られて。もうお嫁に行けない」
それからは、あっとゆうまの出来事だった。怒り狂い泣きじゃくるロロンに数発の平手打ちをくらい、どんなイリュージョンなのか冷水を吐くトカゲに襲われて。
ドカドカと鎧を着た騎士みたいなのが入ってきてと大騒ぎになると……俺は。
四尻尾議会の議事堂で両手を縛られて、騎士っぽいのに囲まれてイスに座らされていた。
どうなってるの?




