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コーヒーブレイク30

「ロロン? まだ起きてるのか、明日は早いぞっ……って。なんだ寝ているのか」


 かなりドタバタと部屋に入ってきたのだが、まったく反応もせず机に突っ伏して眠っているロロンを見ながら思わずソフィアは、微笑んでしまった。

 仕方がない明日は早いしと……このまま寝かせておくことにして、ロロンをベッドへと運ぶソフィアの姿はまるで騎士ナイトだ。でもバトルメイドなんだけど。


 毛布を掛けてあげると、ロロンが「むにゃむにゃ……アオイ様」などと寝言を呟いている。

 これだけだと、ものすごく平和な光景なのだが……。


「ゆっくりお休み。ロロン……明日は早い」


 ロロンの寝顔を見つめていたソフィアは、踵を返して部屋を出ていった。


 そう……明日は、このパーステール国を出ていかなくては、ならないのだから。



 なぜ?


 それは……。


「ふん。妾のせいじゃ!」

「ノア姉様……シッ。マスターが起きてしまうですの」

「むふっ。姉様じゃと……くふふふ」

「ノア様、ロロンは寝てしまっていたので、こっちは私が片付けます」

「すまんのじゃ」

「いっしょにやりましょう。ソフィア姉様」

「くっ。姉様……ステキな響き」



 いったい何をしているのかと言うと。



 遡ること三日前。




「なっ……ふぅ」


 ソフィアが代表して溜め息を吐くと、ロロンも小さく溜め息を吐いたのだが、諦めとかそんなのではない。


 今、目の前で行われている光景に驚いているのだ。

 シラタマが言っていた、アオイとの約束を母親のシラタママがさっそく実行中である。

 世界樹の高さは約五十メートル程度で。まだまだ幼いくらいのサイズらしい。


 それでも高さ五十メートルに大きく広がっていく無数の枝がある。

 葉っぱに関しては、鉛弾の影響で全て落ちてしまっているが……この世界樹をシラタママがスッポリと包み込んでいるのだ!


 スライムである体の体積が増量されて、超巨大な球体ゼリーに変化すると、まるで未来の治療カプセルのような雰囲気を醸している。

 ポコポコ……ゴポゴポと水中で気泡が浮かび上がる音が聞こえてくる。


「ご主人様。わたくしは、このまま世界樹様を治療いたします。たぶんですが、二週間もあれば完治すると思いますので……それまでシラタマの事を宜しくお願いします」


 シラタママは、それだけ言うと瞼を閉じてしまった。

 だが、それと同じくして世界樹が淡く輝き始めると、抉られた箇所や鉛弾で穴だらけだった樹皮がほんの少しづつではあるが再生し始めたのだ!


 誰が見ても世界樹の治療が始まっていることが分かる。


 誰のおかげかも一目瞭然。


 未だにノアに抱っこされているアオイに、シーにアクア、アジュール、そしてティム側についていなかった防衛騎士に召喚士達が、駆け寄って来た。


 今度は、恐怖でもなんでもない。アオイとその召喚獣達と……バトルメイド達へ捧げる感謝の座礼であり、世界樹が召喚した『守護者』として認められた瞬間でもあったのだが……。



「そうじゃ! 妾が悪いのじゃ……本当にすまんことをしたのじゃ」


 ばつが悪そうに俯くノアの頭をシラタマが「ノア姉様のせいじゃないですの」と頭をナデナデしていた。



 あの日。



 自分がアオイの役にたったことで、アオイが『守護者』として認められた。爆睡中だったが。

 ノアは、それが嬉しかったのと、自慢したくてしかたがなかったのと、大興奮していたのが合わさってしまい。


「どうじゃ! これが妾のアオイじゃ。最強の召喚士なのじゃぞ」


 興奮のあまり両手を広げて「妾の恋人じゃ!」と叫んだ時に、力を制御できずに……。

 山脈に向けて消滅魔法をぶっぱなしてしまったのだ。

 大穴が開いてしまった山脈からは、遥か彼方に海が見える景色へと変貌をとげてしまった。


 大穴が開く瞬間の巨大な轟音と太陽に照らされながら消滅していく大量の黒い砂。

 パーステール国に住む亜人の全てが恐怖に落とされたのだ。

 そして……これが原因で、アオイ達はこの国を出て行くことになってしまったのだ。


 そんな訳で、絶賛旅支度中なのである。

 アオイが眠っているのも、この旅支度が原因であった。


「妾が……ううう」

「ノア姉様、いい子いい子ですの」



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