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コーヒーブレイク3

 目が覚めると、そこは知らない天井だった。しかも美少女がベッドの横でつっぷして寝ており、俺の左手を握っている。


 なんでこうなった?


 とにかく落ち着こう。ガバッと起きて、美少女が「うっ、ううん。寝ちゃったみたい」とか言って。キャーってなってぶん殴られる前に……よく考えろ俺。


 そう……たしか俺はハロウィンセールの為に……某有名な遊園地のネズミさんの帽子をかぶってチラシを配ってたはずなんだが。


(……ああ、そうだ俺。チラシ配ってる時に滑って転んで頭をぶつけて……それからどうなったんだ?)


 俺は仰向けのまま辺りをキョロキョロと確認した。薄暗くてよく分からないがなんだか洋館の一室みたいな雰囲気の場所で寝ていたようだ。そして俺の手を握ってつっぷして寝てる美少女……。


(分かった! ハロウィンイベントか何かの医務室とかに運ばれたんだきっと。この人はきっと医療班の方だな、うん)


 全てを理解した!? 俺は仕事中の店に戻る為にガバッと起き上がるのだった。


「うっ、ううん。寝ちゃったみたい」


 つっぷしていた頭を上げて寝ぼけ眼で俺と目があった。


「――――キャアーッ」


 そして俺は強烈なパンチを……くらわなかった。


「申し訳ございません……あっ。えっと手は……『守護者』様がうなされてたので」


 手をサッと離すとモジモジしながら謝る姿が可愛らしい。 ハッ、不意に俺の目に飛び込んできた物があった。

 それはピコピコと動いたかと思ったら、ペタンと垂れた獣耳だった。


(やっぱハロウィンイベントの会場なんだな。しかし可愛いなぁ)

「おーっ、リアルですね! その耳は動くんすねー」


 そんな俺の言葉に、小首を傾げる獣耳美少女が「えっ? 普通に動きますよ」と言った。


「なぜそんな事を聞くのですか? それに『守護者』様も立派な耳がついているじゃないですか?」


「えっ? ああこれは某鼠ので……安ものだし。あなたの耳は高価そうですね! 電動式かなんかですかね。あまり詳しくないんですよ。それより、すみませんでした。俺……滑って転んじゃったみたいで、なんか恥ずかしいな」


 俺は頬をポリポリとかきながら頭をペコリとした。


「あのう、けっこう大きなハロウィンイベントしてるんですね! ここの責任者の方にもお礼を言わないと……あっ、すみません一方的に話しちゃって。俺、冬野葵ですフユノアオイって言います」


 思わず色々と話してしまった俺をあっけにとられた様子で見る美少女が「はろいん? いべとん?」と呟きまたも、小首を傾げている。


「……申し訳ございません。『守護者』様の、おっしゃった事が分からなくて……」

「……えっと。ここ医務室とかですよね? こんなとこでまで演技しなくてもいいですよ。それと俺の事は冬野って呼んで下さい」

「『守護者』様がそうおっしゃるのなら……かしこまりました、フユノ様。私は四尻尾議会防衛第一召喚士団に所属をしております。ロロン・ファイアブリックと申します」


 ロロンと名乗った獣耳美少女が立て膝をついて畏まると白いローブの下のほうから、パタパタと銀の尻尾が揺れた。

 俺は少し困った顔をしてロロンにベッドの横の椅子に座るようにお願いすると、また頬をポリポリしてしまった。


(……なんのキャラ設定か分からないけど、頑なに世界観を守ろうとする姿勢がスゴいな)


 せっかくのハロウィンイベントだからなのかもと思った俺は深く突っ込むのをやめた。




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