コーヒーブレイク29
「そうじゃ。ソフィアよ、お前は騎士ではないのじゃ! バトルメイドなのじゃぞ。何度も同じ事を言わせるでない。」
「……はい」
仕返しとばかりに!? ノアから精神攻撃を食らったソフィアが、まるで騎士のごとく膝をついたのだが……ノアもロロンも真っ白スライムを見据えており、あっけなく無視されていた。
アオイは未だに目を覚まさない。
「召喚士様、初めまして。わたくし、シラタママ・スノー・ホワイトと申します」
「…………(ぐうぐう)」
「単刀直入に、伺いますわ……召喚士様の掲示された内容に相違はございませんか?」
「…………(ぐうぐう)」
「召喚士様は寡黙なお方なのですね……沈黙は肯定と取らせて頂いて、よろしいということですわね」
「…………(ぐうぐう)」
「本当に宜しいのですね? 私も娘もスライムです。人間にとっては、気味の悪いゼリーな存在ですわよ。本当に、私と娘を幸せにしてくれますか?」
(ねえ! ソフィア。ノア様の時となんか展開が似ているような……)
(私に聞くな! それより、ノア様だって……お伽噺の様な存在なのに。今度はスライムだなんて……しかも可愛い真っ白スライム。しかも娘さんもいるみたいだな)
ロロンとソフィアは一斉に、ノアに抱かれているアオイを凝視した。
((ポッ))
「…………(ぐうぐう)」
「ありがとうございます。受け入れて頂けるのですわね」
「…………(ぐうぐう)」
「沈黙を肯定として理解させて頂きましたわ。召喚士様の願いをお受けいたします。それが私と娘の幸せにつながるなら! 本日この刻を持って私と娘は召喚士様のお嫁さんになりますわ」
「キャッ。お母様、わたしもマスターに自己紹介しても宜しいですか?」
「…………(ぐうぐう)」
アオイの沈黙によって、新たに契約が結ばれたのだったが。もちろん今回もアオイ本人は夢の中なのであった。
「わたし。シラタマ・スノー・ホワイトですの。これからマスターのお嫁さんとして、がんばりますの」
プニュっと可愛い効果音をならして、母であるシラタママの体から出てきたのは、真っ白なスライムだった。大きさはバスケットボールぐらいだろうか。今度は随分と小さなスライムだった。
「では、わたくしは約束をはたしましょう。シラタマ姫あなたは、ご主人様のところで待っていてね」
「はい。お母様、マスターの傍で良い子にしてますの」
「こほん。少し待つのじゃ! 無事に召喚契約を終了させたみたいじゃが。アオイは眠っており、契約のことを知らぬのじゃ。アオイが起きるまでは、勝手な行動は控えてほしいのじゃ」
同じような状況を経験した、ノアが言うのもおかしいのかもしれないが、アオイが眠っている以上は、恋人であるノアが責任者のようなものだ。
それに、いくらハーレムを肯定しているとはいえ……いきなり嫁が二人も増えるし。本人はまだ知らないが……。
なんか約束をはたしましょうとか言ってるし。可愛いけど……兎に角だ。
「アオイが起きるまで待つのじゃ!」
まあ。そうだよね。
だが、真っ白スライムのクィーンホーリースライムであるシラタママは、ニコニコと微笑んだまま世界樹に向かって進んでいた。
「あのう……漆黒竜神様ですの」
「なんじゃ」
「お母様なら大丈夫! マスターとのお約束を守りに行ったですの」
愛くるしく微笑むシラタマが、ノアに抱かれているアオイの頭を撫でながら、母親にそっくりの笑顔を見せるのだった。スライムだから似てて当たり前なのだが……スライムに頭を撫でる手はあるのだろうか?




