コーヒーブレイク27
白色のレーザービームの輝きが一段と増すと――――――それは現れた。
ポヨポヨボヨ~ン……ボヨヨヨ~ン。
「えっ……」
俺は、目を疑った。
「白いスライム!?」
大きくて真っ白なスライムが、俺の目の前でポヨンポヨンしている。
目をクリクリとさせて長い睫を揺らしている。
いったいどこで間違えたんだろう……。
俺は、白衣の天使を召喚したはずなんだがな。
そんな小首を傾げて考えている俺に、ポヨンポヨンと体を揺らしながら真っ白スライムが近づいてくる。
大きさは……あの有名な奈良の亀石ぐらいだろうか。けっこう大きい。
でも俺がファンタジー世界で考えていたスライムは、もっとドロドロとした液体みたいなのなんだけど。
このスライムはゼリーでできた巨大な岩って感じだ。
なんだろう、一生懸命に俺に向かってくるスライムが、なんだか可愛く見える。天使じゃないけど。そう……天使じゃないけどね。
(……なぜ。二回も言ったのじゃ?)
(大切なことなので……)
「きゃ~。可愛い~」
「私も、可愛いと思う」
「おいおい、妾を見ておるぞ。笑っておるぞ」
うむ。女性陣は大興奮だし。天使じゃないけどいいかな。天使じゃないけど。
「……アオイ。そんなに天使が好きなら、妾がコスプレしてもいいのじゃぞ」
「……ノア。俺の知識をちょいちょいブッコンでくるのやめて」
「なんじゃ。いいではないか」
ふと。ここで俺は気がついた。悠長に皆と話しているけど、ティム達もそろそろ動けるようになるのではと。
「アオイ様それなら。私とソフィアで世界樹様へ攻撃をした輩を全員拘束済みですよ」
「フユノ様ふふふ。私とロロンで頑張ったぞ」
どうやら、俺が召喚に集中している間にロロンとソフィアで動いたようなのだが……。
俺が辺りを見回すと、そこには両腕を縛られた召喚士団と騎士団が、学校の朝礼をまつ生徒のように、きちんと整列して体育座りさせられていた。
ティムもタンも縛られており、なんだか「トールだと! 神言語で王と――」とか騒いでいるがこれ以上、世界樹に火の玉を撃ち込まれてもこまるので、グッジョブ! ロロン、ソフィアと言ったところだろう。
((ポッ))
シーにアクア、アジュールもロロン達の行動に文句はないようで、これから起きるかもしれない何かを期待しながら俺達を見ている。
そうだ、まだ世界樹から鉛弾を消滅させただけなのだ。
今は、その為に召喚した。この真っ白なプリティースライムだよ。
俺は、ニコッと微笑むとさっそく言葉を交わすことにしてみた。
「えっと。こんにちは。俺の言葉は通じるかな?」
「はい。問題ありませんわ、召喚士様」
「は~い。大丈夫なの、マスター」
目の前には、大きなスライムが一匹? 一人? いるだけなんだけどな。
俺の問いかけには二匹? ええい。匹なのか人なのか分からないから、人でいいや。
(アオイ。そなたも大概に適当じゃな)
(いいじゃん。いいじゃん別に、だって会話できるのに匹はちょっと抵抗があるしね)
俺の問いかけに答えたのは、たしかに二人だった。




