コーヒーブレイク23
ティムに従う召喚士達も、それを護衛する騎士達も目の前で起きてしまった事が分からない訳ではないと思いたい。
だが……もう後には引けない。
ティムを信じて付いてきた。
もう一度、火精霊に命令しなきゃ。
だけど……プスプスと焦げ臭い煙が、辺りを包んでる。
本当はヤバいんじゃないだろうか? そんな悲壮感も漂う中、ティムが声を荒げた。
「どうした。世界樹様を救えばいいのだ。それだけの事だ……要するに、勝てばいいんだよ勝てば!」
「「「「うおおおおおおおお」」」」
あいつは、あんなキャラだったのだろうか? 一体全体、何と戦っているのやら。
(ノア! 第二波が来る前に、鉛弾を消滅させてくれ)
(まかせるのじゃ! 妾にかかれば造作もないことよ。ただのう、少しばかり精神を集中させる時間が欲しいのじゃ。さすがに大量の鉛弾だけを狙って消滅させるのじゃからな、しかも世界樹の中に埋まって見えない弾もあるしのう)
(すまん。大変だろうけど頼むねノア)
(フフフ。恋人からのお願いじゃな! まかせろなねにゃ)
(……噛んだよね今)
(なんのことじゃ?)
それは置いておき。
ノアが集中する時間が必要だ。間違って世界樹を消滅なんてことになったら、目も当てられない。
俺はロロンとソフィアの手を引くと世界樹に向かって走りだした。
「えっ、大胆な」とか「なっ、なんだ。私、手汗が」とか言っている。世界樹の事は気にならないのだろうか? なんとも呑気な。
「このまま走りながら聞いてくれ」
「「はい」」
偉そうだが、俺が一番足が遅かった。
「ノアが世界樹から、鉛弾を消滅させる為に集中する時間が必要だ! 鉛弾って、あの大量の小石みたいなのな。ただ、成功したとしてもだ、世界樹の受けたダメージが無くなる訳じゃない、そこは俺が何とかする、たぶん。ロロンとソフィアには――――」
「はい。アオイ様とノア様をお守りします」
「まかせろ! フユノ様とノア様は私が守る」
二人は俺の言いたいことを察したようだ。
(はっ! もしかしたら……まさかな)
(まさかじゃないのじゃ。あの漆黒のリボンには、主との間に意思疎通効果があるのじゃ。緊急時ゆえに妾がスイッチを入れた、まあ念話みたいなものじゃな。アオイが慌てておったから、言葉にする前に思ったことが二人と妾に通じたのじゃろ)
(アハハハハ……俺のプライバシーが)
もう。仏門に入って修行するしかないようだ。煩悩退散。
((アオイ様。フユノ様。いきます。いくぞ))
ロロンとソフィアが俺の手から離れると、勢いよくジャンプした。
「「『漆黒竜より授かりし黒き力を解放せよ! 漆黒のリボンよ我に力をバトルメイドモード』」」
勢いは良かったが、若干……恥ずかしいそうに叫んだのだった。




