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コーヒーブレイク22

(ノア!)

(ふふん! 愚問じゃ)


 ペアリングで意識がリンクしている俺とノアに、もはや言葉は必要ない。だが……もうエロいこと考えちゃダメかもしれない。


(……それは構わないのじゃ)

(……あっ。ありがと)


 そんなシモな話をしながらも、コンマ単位で時は流れている。

 俺がノアに確認したのは、ノアの持つ消滅の力で世界樹を蝕んでいる鉛弾のみを消し去れないかという事だ。

 これには、ノアからの愚問という返事を俺は信じる。


(アオイ。そろそろ時間じゃ、『竜思考ドラゴンハイスピード』が使えなくなるのじゃ)


 成る程。


 この素晴らしい能力には、時間制限があるらしい。

 漆黒竜神であるノアでも日に二回程度しか使えないそうだ。そして一回につき一秒までなのだ。

 俺はノアが使ってくれた力をペアリングの効果で共有できているから、このドラゴンハイスピード状態でいられるのだ。


(まずは、火の玉をなんとかせねばな……)


 後どれくらいの時間が残っているのだろうか。時間というにはおこがましいか……秒だからな。


 ノアの姿が漆黒竜神に変わると、世界樹を囲みながら放たれた火の玉を消滅させていく。

 ボフッ、ボフッ、サラサラサラと黒い砂に変わり消滅していく火の玉の、残りが僅かになった時だった。


 ――――――ブゥン。


 俺の脳が目が体が、突然に重く感じられた……いや。これが通常の感覚なのだろうけど……今度は逆に、俺の体がスーパースローな感じがして、じれったい。

 これって、夢の中で走っても走ってもスピードがでないのに似ているかもしれない。

 うん。あまり多用すると副作用が厳しいかもしれない、などと考えていると。


「いかん! 一発だけ、うち漏らしたのじゃ」


 ノアの悲痛な声が聞こえた。


 世界樹に向けて発せられた、大量の火の玉をノアが消滅させているうちに、『竜思考ドラゴンハイスピード』が終わってしまい、一発だけ火の玉が世界樹を撃ち抜いてしまった。


 ――――――ドゴーン。


 たった一発ではあったが、火の玉の威力が凄かったのか世界樹の左下部が激しく、えぐり取られていた!


「「「「なっ……」」」」


 言葉を失う……シー、アクア、アジュールと、なぜかタンも。


 これってどうみても、やりすぎじゃないか! あいつ、何考えてんだ。

 こう思ったのは俺だけじゃないはずだ……もしも、ノアがいなかったら。火の玉が全弾、世界樹に命中していたら……。


 世界樹が燃え尽きていたんじゃなかろうか!?

 あいつ、なにやってんだよ!


「おっ、おいティム。こんな過激な治療方法などと聞いてないぞ!」

「タン様、なに言ってるのですか。すでにあなたも、こちら側なんですよ。覚悟を決めてもらいたいですね」

「……漆黒竜神と恋人になりたかっただけなのに」


 ガクッと膝を落とすタン。

 四尻尾議会の代表議席の一角であるタンが、ティムに上手く乗せられたのか……それとも恋は盲目だったのかは、分からないが。

 もう彼は、もとに戻れないだろう。ティムが世界樹を救出しない限り、ただの脳筋反乱虎男でしかないのだ。

 タンには可哀想だが、状況はかなり悪い。なぜなら世界樹は、えぐられた部分がプスプスと煙を上げながら燃えている。


 だれがどう見ても、やりすぎ! なのだ。


「世界樹様は、この国を守るのが使命なのだ! 我々を守ってもらわないと困るんだよ。その為には、多少の痛みも許して頂けるはずだ」


 まだ全ての鉛弾が取り除かれた訳ではない。

 ニヤリと口角を上げるティムが、第二波の準備を命令した。




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