コーヒーブレイク20
このカラーズという世界は全体的に三日月の様な地形をしており、亜人の国パーステールの位置はちょうど真ん中の辺りになる。
世界樹を中心にして巨大な森に結界を張り巡らせ、その範囲内には西側の海岸、東側の山脈が含まれる。
北側と南側は、一部を開墾して作物を育てたり川の恵みを皆で分けあったりしながら、つつましく暮らしているのだ。
街といっても、そんな大げさな物ではなく。中心に公共の建物やマーケットがあり、それを囲むように家が建てられている。
世界樹は、そんな街の中心から少し北側にある丘の上に立っていて、すぐそばには地下水が湧き上がる大きな池があり、それが川となって街の中心に流れているのであった。
世界樹の館も、この大きな池の畔にあるのだ。
水族だけは街を流れる川沿いに家を建てることで、いつでも海岸に移動できるようにしていたが、それ以外は特に区画を分けたりなどもせずに住んでおり。みんな仲良く……そんな田舎街を思わせるのが、この亜人の国の特徴だった。
そんな世界樹の立つ丘で、俺はさっきから睨みあいの真っ最中に巻き込まれている。
なんでこうなった?
シーに呼ばれてから俺達は急いで世界樹の館を出ると、目の前に繰り広げられた光景に驚いた。
世界樹を取り囲むティム率いる防衛召喚士団と、それを護衛するかのように展開している、タン率いる防衛騎士団の姿があった。
そして! アクアとアジュールが、ティムとタンと睨みあう状況だ。
アクア達を護衛する召喚士団と騎士団も、皆が怖い顔をしておりまさに一触即発といった感じなのだ。
「……これって、仲間割れか何かなのか?」
「妾には分からんのじゃ」
「いったいどうしたの」
「なにがあったのだ? 私はどちらにつけば……。ああ、私はフユノ様の騎士だったな」
「違うのじゃ、ソフィア達はアオイと妾のバトルメイドじゃ。騎士じゃないぞ」
「…………」
グスンとばかりに獣耳をペタッとさせるソフィア。
俺は事の成り行きをシーに確認するが、シーも意味が分からないとの事で。兎に角、なんか大事なので俺を呼びに来たのだそうだ。
世界樹は瀕死の状態から変わっていないのに、いったいぜんたい何事だと言うのだろう。
そんな傍観者気味の俺に気がついた、イケメン狐男のティムが大声で叫んだ。
「よそ者が! 私は貴様を認めてはいない。世界樹様に埋め込まれた……不思議な小石は、我らで取り除く」
俺は……なんで、ティムに嫌われているのだろうか? 頭の中がハテナマークだった。
「……なんで俺、ティムさんに嫌われてるんすかね?」
「なっ……ふざけるな! 世界樹様に召喚されてから、寝てばかりではないか」
黄色な狐顔が、怒りの赤い顔に変わりながら怒鳴り散らすティム。
「漆黒竜にしても、破壊するだけの野蛮なトカゲだ。最初は竜神などと言うから畏まったが、本当に神なのかも分からんしな。我々召喚士団が力を合わせれば世界樹様を救えるはずだ!」
よそ者は出ていけ! ティムが俺を睨みつける瞳に力が入る。
「あの~。ティムの話は分かりましたけど~。タンはなんでそっちサイドなのかしら~」
「そんなのは決まってる! 世界樹を救って……漆黒竜神様に認めてもらうんだ」
アクアの問いに答える虎男が、ガオーとポーズしていた。獣か。うん、恋する……獣だ。




