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コーヒーブレイク2

「無事なんだな。姫様は本当に無事なんだな?」

「……今のところは、です」


 世界樹の巫女であるエルフのシーに容体を確認するのは四尻尾議会の代表議席の一人で、陸族長タン・ペール。虎男と言った表現がズバリな、獣人であった。先ほどからシーに質問をしながらも俊敏に山道を走る速度は、かなりのものなのだが息一つ乱してはいない。この速度で追走しているシーもなかなかに超人なのだが……。

 その会話を伺いながらも口は挟まずに、ひたすら翼をバタつかせているのが空族長アジュール・ミントクリームだ。彼女は虎男と違い、均整のとれた顔に黄色の瞳の美しい女性だ。顔は人間なのだが、その両腕は翼になっており足も臀部も鳥といったパーツで構成されている鳥人なのだ。

 本来ならもっと優雅に飛ぶのだが、世界樹への心配と背中にのせたマーメイドのせいで少しもたついていた。


「……わたくし、重いかしら?」


 ピンクの髪に貝殻の飾りをした美少女が申し訳なさそうに俯いている。貝殻ブラに隠されたチッパイが可愛く自己主張し腰から下はお魚さんパーツの水族長のアクア・シアン。数時間なら尾びれを足に変化して歩けるのだが、今回は急いでいるのでアジュールに乗せてもらっていた。


 陸族、空族、水族と巫女である森族のシーを含めた代表議席の四人で構成されたのが、パーステール国の四尻尾議会であり、国のまつりごとを取り仕切る重要な機関なのだ。


 緊急で召集された理由を理解して、四人が世界樹の前でうなだれていた。

 国を永きにわたり加護してくれている世界樹が、人間によって埋め込まれた不思議な小石によって枯れはてようとしていたのだ。

 いつもなら、巫女であるシーにの前に具現化した女の子の姿で現れて、ニコニコと可愛い笑顔を見せてくれていたのだが……今は現れることすらままならなかった。


「……これほど……とは」


 タンが目の前の光景に怒りをぶつける。なんどとなく地面に渾身の一撃を放っては俯く。


「タン。世界樹様が地面を穴だらけにしないで……と言っておりますよ」

「はっ、姫、ひめさまぁぁ」


 辺り一面に世界樹の葉が落ちていて絨毯のように敷き詰められている。不思議な……青みがかった灰色の小石が埋め込まれたことで全ての葉が落ちたのだろう……世界樹はまるで真冬の桜のように、枝だけになっていた。


 ふいにシーが声を荒げる。


「世界樹様! お止め下さい!」


 それに反応するようにタン、アジュール、アクアが「どうした?」と口を開いた。


「皆に話があるそうです。お姿を……お見せになるそうです」


 四人が世界樹を前に方膝を付いて畏まると淡い輝きとともに女の子が姿を見せた。

 体に食い込んだ小石が侵食するように世界樹を蝕んでいく。笑顔を見せていることなど苦痛しかない……そんな状態でも四人の亜人の前で、優しい微笑を振りまく女の子がいた。


「……今から……召喚します。だ、から、『守護者』と……新しい地を探すの、です」

「「「「えっ!?」」」」


 この日、一人の『守護者』が世界樹によって召喚された。



 後に、世界の『守護者』として名を轟かすことに……なる。かもしれない。




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