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コーヒーブレイク17

「うっうう」

「ノア……泣かないで」

「なんじゃ。泣いてなどおらんぞ。うううう」

「落ち着いて聞いて……ノア」

「だから、なんじゃ。そろそろ妾は帰るのじゃ。ロロンやソフィアには恥ずかしゅうて会えん……妾はフラれたのじゃ。嘘つきなのじゃ」


 困ったな。俺の話し方が悪かったんだろうな……それ以上にノアが乙女ドラゴンだったってことかな。


「ノア・オニキス・ジェッタ。漆黒竜のノアも、目が覚めた時に傍にいてくれたノアも大好きです。正直、漆黒の竜を見た時も、目が覚めてノアを見た時も……一目惚れでした。俺と付き合って下さい」

「なっ」



 漆黒竜神も一人の乙女なのだろう。オロオロとしと思えば、タタタタタッとカーテンの後ろに隠れてしまった。まあ、半分だけ真っ赤な顔を見せて俯きながらも、こちらをチラチラと見ている。


「つ、付き合うとは……恋人になるってことか?」

「ああ、そうだよ。ダメかな? ノア」


 トタトタトタ……ポフッ。俺の胸に帰ってきたノアが、それは嬉しそうに微笑んだ。

 この笑顔を大切にしたい……。

 召喚された世界で、誰も知ってる人がいなくて、本当は不安でしかたがなかった。

 でもノアは。こんな俺に、最初から好意を抱いてくれていた。変な目で俺を見なかった。

 別に、ロロンやソフィアが俺と出会ったばかりの態度が悪いとは言わない。俺だって同じ目に合えばそうするだろうし、一日か二日だけど知り会ってみて二人が悪い子じゃないってのは十分に理解はできている。ロロンとソフィアだって普通で考えれば、仲良く!? なるのが早いぐらいだ。

 それぐらい心を開いていくのは時間がかかるものだ……。

 俺がノアを受け入れるなんてことが、おこがましい。ノアに受け入れてもらいたい、それが俺の素直な感情だった。


 いつまでこの世界にいるのか、帰ることは出来ないのか……何も分からない。でもノアを好きでいたい。ノアと一緒にいたいんだ。


 俺が照れながらノアの答えを待っていると。


「アオイ。本当に妾でいいのじゃな」

「ノアが好きだ」

「「ポッ」」


 二人して照れながら顔を赤くした……とたん。

俺の左の薬指に軽い痛みが走る。ジリジリと焼ける感覚に思わず「くっ」と洩らしてしまう。それは俺とノアの二人に同時に起こったようで、目の前には痛みに堪える? ノアの姿が……。


「……ノア。なんで痛いのに顔はニヘラ~ってしてんだ?」

「なっ。ニヘラ~などしておらんぞ。でも、嬉しいのは、あたりまえじゃ! なぜなら妾とアオイが恋人になった証が、このペアリングなのじゃからな」


 どうやら俺とノアの左の薬指に、現れた漆黒のリングは恋人の証のようだ。

 完全に具現化されると、深く吸い込まれそうな黒いリングが輝いている。

 そのリングを見て見て! とばかりに俺に見せびらかすノアが、無邪気に跳び跳ねている。

 きりっとした顔が見せるギャップが、とても可愛いく思えた。


「これはのう、ん?」

「どした? ノア」


 シッ! と俺の唇にノアの白い指が触れるとチラリと視線を扉に向ける。

 ――――シュッ。 俺の唇に触れていたノアの手が鋭い音をたてて銃を撃つような真似で扉に向いた。

 ボフッ……初めて出会った時と同じように黒い砂に変化して消滅した扉。


「「キャー」」


 扉が消滅すると、ロロンとソフィアが崩れる様にして部屋の中へ倒れてきた。


「盗み聞きをするメイドには、お仕置きが必要じゃな」

「「ひいいいいいっ。申し訳ございません」」


 ジトッと二人を睨むノアに、平謝りのロロンとソフィアだった。




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