血の匂い、皮膚にまとわりつくウジ、削れてゆく神経と体力、狂ってゆく人間、崩壊する精神、そして消えることのない恐怖の全てのはじまり
・まえがき
はじめに、この度、ご覧になっていただきありがとうございます。
近年先の大戦に関するアニメやゲーム等の様々な作品が世に溢れる中、私を含めた若年層の中で戦争に対する、考え方や捉え方がずれて居るような人が増えているように感じています。
極端の例をあげるならば、ゲームやアニメ等の影響によって、「ナチスはかっこいい」などの本来、現実の「Nazis」と仮想の「ナチス」の差別を図らなければならないのにもかかわらず、主観的に、犯罪組織であるNazisを正当化する人物も少なからず出てきていることは、現在の日本において、好ましくない状況ではないでしょうか。
ここで大事なのは、戦争というものは「正しい」か「間違っている」という議論はもちろんですが、いかに悲惨で悲劇的な物事の連続であるということ認識することではないでしょうか。
今作は戦争の中における栄光の裏にあったまさに「悲惨」の一言に尽きる物語で、これを通じて読者の皆様に再び戦争を考え直していただきたいと考えております。
1941年の真珠湾攻撃から始まり、1945年の原爆投下やソ連の裏切りによって幕を閉じた、大アジア解放、そして自衛のための戦争、「大東亜戦争・太平洋戦争」。私たちの先祖が日本を守る一心で戦い抜いた悲劇の戦争。
今回は私の初の作品でありますのでどうか暖かい目でお読みになってください。
この作品は、史実の上にフィクションを加えた作品です。故に多少事実とは異なる点がございます。
その点も踏まえて、お楽しみください。
・安平松之助・
・山形県の小作農の三人兄弟の次男として生まれた安平松之助は干ばつや不況の影響で貧困にあえいでおり、高等学校の進学を諦めたが、学業が優秀であったため、競争の激しい陸軍士官学校へ進学する。
卒業したのち、宇都宮の歩兵師団に配属され、満州へ渡ることになる。
支那事変(日中戦争)が初まると松之助の部隊は戦闘に参加する。しかし、しばらくして松之助は左手の小指を失うなどの重傷を負い内地に治療のために異動する。
その後、一時除隊し、予備役にまわり加工食品会社で働くも、日米開戦をきっかけに再入営をし、1943年10月に南方軍(現在のミャンマー、バングラディッシュの一部の地域に存在した日本陸軍の一部隊)に配属され、第33師団の歩兵中隊の中隊長に任官する。
なお、加工食品会社に勤めている際、美智子という女と出逢い、結婚する。
松之助の再入営をきっかけに松之助の意思で美智子は二歳の娘の華絵を連れて彼女と実家のある栃木県に移り住む。
今作は1944年のインパール作戦の開始直前からはじまる。