桜の木の下で
季節は春。
青春を羨む一人の男子高校生がいた。
彼の名前は柏原祐樹、ごく普通の高校生だ。
彼は一人の女の子に恋をした。
その女の子は学校のアイドルで眉目秀麗、文武両道、完璧な女の子だ。
今日彼はその女の子に告白を申し込む。
昔ながらの方法で、ロッカーにラブレターを入れるというベタなやつだ。
待ち合わせ場所は桜の木の下。
学校のアイドルが僕なんかのために時間を割いてくれるのかはわからない。
でも気持ちはしっかり伝えたい、彼はそう思い彼女を待った。
待ち合わせ時間になると彼女が現れた―――
桜が舞い散る木の下で一人の男子高校生が女子高生に告白を申し込んでいる。
「好きです!付き合ってください!」
その言葉と同時に彼は頭を下げ、右手を差し出す。
よくある告白の仕方だ。
「………………」
彼女は黙り込んだ。
しばらくの間沈黙が続く。
その時彼は覚悟した。
そうだよな。無理だよな。
顔・勉強・運動、全て平均の俺がクラスの、いや、学校のアイドル・神野幸花と付き合おうだなんて無駄とはわかっていた。
何しろサッカー部のイケメン部長に告白されて振ったって話も聞く。
もう一回勇気を振り絞ってこの沈黙を終わらせようと、彼は口を開いた。
「ごめんね、俺なんかに告白されて迷惑だったよね。今後関わらないように――――
「いいよ。」
「え?」
「だからいいよって言ってるの。私たち付き合おっか。」
その時彼は嬉しかったのか安心したのか涙が溢れてきた。
何回涙を拭おうとも溢れてくる。
「なんで泣いてるの、私と付き合えたんだよ、うれしくないの?」
泣き崩れる彼の頭を彼女が優しく撫でる。
嬉しいに決まってる。
ずっと片思いしてた人がたった今僕の彼女になったんだ。
嬉しくないわけがない。
「ごめん、みっともないところみせて。でも君と付き合えたことが何より、どんなことより嬉しくて……」
「私も嬉しい、ずっと待ってたんだからね……」
彼女は震えた声でそう言った。
ピチャ…
彼の手に雫が落ちる。
雨かな…
彼女はボソッとそう言った。
「雨なんてどこにも――――」
彼が涙を拭い、彼女の方を見る。
彼女の瞳から涙が溢れている。
「どうして泣いてるの!?僕何かいけないことした!?大丈夫!?」
彼は必死に彼女に言葉を投げかける。
「いや、そうじゃないの。」
じゃあどうして。
彼は不思議そうに問いかける。
「あのね。私も祐樹くん、君のことがずっと好きだったんだ。」
「僕の…ことが…?」
「うん、私が君のこと好きになった理由を聞きたい?」
「うん。」
それはね――――