No.2
〜2〜
あの電話から2日。
今日はお互い同じシフトの日。
あれから毎日メールや電話はしてるけど顔をあわせるのは初めて。
なんだか、緊張する。
友達にもまだ話していない。
だって、もし付き合ってるなんて自分の勘違いだったら恥ずかしいから。
本当は今すぐにでも言ってしまいたいけど。
「おはようございます。」
バイト先では何時に来ようと最初の挨拶は決まっている。
おはようございます。
朝一番に合わなくても今日初めて会うのだからおはようなんだ。 というのです。
みんなに挨拶をし、軽く会話をすると、裏のロッカールームに向かう。
ガチャ。
ドアを開けると良く知る後ろ姿が。
「おはよう。」
なんだ。
以外にもいつも通りに挨拶ができた。
畑 あずさ (はた あずさ) 18歳 今年高校3年生になった。
このバイトは高2になった春から始めたからもう一年以上になる。
今年は進学か就職か進路をきめなければいけない。
あずさは就職を希望中。 ただ、この不景気に入れるところがあるかどうか。…本人はまったく関心がないようだけど。
なるようになるでしょ。 がアズサの意見。
「おそよう。」
彼もいつも通りの挨拶。
彼曰く、どう考えても朝じゃないときは遅いから遅いおはようで、「おそよう」なんだとか。
山田 渉 (やまだ わたる) 17歳 今年高校二年生になった。
バイトは高1の春から始めた。アズサが春休みのときからバイトの練習なんかに参加していたらしく、高校入学式前からバイトを決めていたらしい。
建築関係の専門科目のある学校に通い、将来は設計の仕事がしたいんだとか…。
みんなからの信頼は厚くどこにいても中心的存在となるタイプ。
頼れる。賢い。おもしろい。愛嬌がある。と人から好かれることこの上ない。
たまに寒い行動が入るのが…。
顔は猫顔。
人気があるのは顔より性格なんだとアズサは思っている。
「おはようでしょ。」
いつも通り突っ込む。
「失礼しました。」
彼もいつも通り返す。
「まだ、着替えないの?」
まだ学生服のまんまの彼を見て、聞いた。アズサはバイトのユニフォームを鞄から出しながら尋ねた。
「あずささんが来たら顔を見てから着替えようと思って。」
いたずらっぽく笑いながら答えた。
「!!!」
アズサはよくそんなことがスラスラ出てくるなぁ。と感心しながらも恥ずかしさから顔を赤らめてしまった。
「あ〜!何赤くなってんのぉ?ププゥ〜〜」
両手の人差し指を立て、交互に前に指しながら横目で笑ってる。
山田君…その行動、おかしいから…。
アズサは寒気が襲ってきて、赤い顔も一瞬で治まってしまった。
「ちょっとドキッとしたのに。今ので一瞬にして現実に戻された気分だわ。」
軽く睨みを利かせながら言うと、アズサはそのまま着替えるため、カーテンの向こうへ消えていった。
山田君は何か言いたげに立ち上がったけど、ちょうど他のバイトの子がおはよう〜とロッカールームに入ってきた。
それでタイミングを逃したのか山田君は目線はこっちに残したまま「おそよう〜」と答えた。
カーテンの隙間から一部始終を覗いていたアズサはクスッと笑うと、さっさと着替えだした。