No.17
〜17〜
なんだかんだで夏休みも終盤を迎えた。
アレ以来、アズサ達は仲良くバイトをこなしている。
渉は今までのようにアズサにちょっかいをだしたり、バイト先の人たちに漫才夫婦だと言われ続けているけれど、蔑むような態度は一切取らなくなった。
「アズサ。あと30分でピークも終わるから。頑張ろう。ね?」
猫のように微笑んでくる。
あまりの優しさにアズサはむず痒い思いでいた。
「大丈夫だから。みんなも頑張って。」
素直にありがとうとは言えず、周りを気遣うふりをして答えを返す。
「漫才夫婦というよりバカップルだね。」
カウンターで商品を待っている陽子さんが呆れたように呟く。
「お互いさまでしょう。」
渉が自慢げに陽子さんに商品を渡す。
「見せ付けないでよね。」
陽子さんは苦笑しながらお客さんの元へと戻っていった。
陽子さんはマネージャーとの記念すべき交際開始から約一週間でマネージャーが移動になった。
本店にいるから週に2回のペースでアズサ達の店には顔を出している。
そのときの陽子さんのうれしそうな顔ってなんともいえない。
傍から見れば普通のようでも事情をしっているアズサ達から見れば一目瞭然。
目で合図したりすれ違うときにわざと手を触れ合ったり。
なんだか見ていてこっちまで顔がにやけちゃうんだもん。
あの二人には幸せになってほしい。
アズサは陽子さんを見つめながらニコニコと顔が緩んでいた。
「アズサ。何にやけんの?俺に惚れ直してんのはわかるけど、オーダーたまってるよ。」
渉の声にサッとオーダーが映る画面に目をやるとすでに3つ…。
「ヤバイ!!」
アズサは急いで手を動かす。
30秒後1つ目のオーダーを片付け、次にとりかかる。
それからは、他のことは考えずにオーダーにだけ集中してこなしていった。
「休憩入ります。」
やっと片付いた30分後。
アズサは休憩になった。夏休みという忙しいときにお互いに働き手であるアズサ達は、一緒に休憩に入ることはほんとなかった。
「アズサ。金持った?たくさん買ってきてね。」
渉が裏へ下がろうとするアズサに声をかける。
「大丈夫。ちゃんと持ってるよ。みんなから集めた大金だからね。」
片手でヒラヒラと答えるとお店の金庫に預けてあった財布を取り出す。
「んじゃ。行きますか?」
先に裏へ戻っていた後輩のバイト仲間和泉君に声をかけるとアズサは上着をはおり店の外へとでた。
「あっついねぇ〜。今日は最高の花火日和になりそうだね。」
アズサは空を見上げて大きく背伸びをする。
「そうっすね。みんなでぱぁ〜っと盛り上がりましょう。」
和泉君がみんなから集めたやりたい花火を書いたメモを手に言った。
今日はバイトが終わったら近くの公園で花火をやろうってことになっていた。
前々からみんなから資金を回収してあったからそのお金で必要なものを買いにいく。
総勢20名ほどで行うためかなりの資金が集まった。
「楽しみぃ〜。」
花火が大好きなアズサは好きな花火を買うため自分から進んで買出しを志願したのだ。
同じ時間に休憩だった和泉君はとばっちりを食らったわけだけど、みんなで騒ぐのが大好きらしく、嫌な顔ひとつせずに買い物に付き合ってくれるという。
せめてもと、アイスクリームの自販機で好きだというチョコミントのアイスを奢ってあげた。
「んじゃ、行きますか。」
食べ終わると二人は蒸し暑い店内へと向かった。






