No.15
〜15〜
「はぁ、はぁ…。」
駐輪場から、急いで走ってきた。
今まではこの道をのんびり歩くことしかしたことがなかったらか、息が上がっている。
あの階段を一気にあがったのか…。
後ろを振り向くと、優に100段はあろうかと思う階段が見える。
「いつもはわたるさんと一緒に手つないで上ったもんな。」
昨日までそうやっていたのになんだか懐かしい。
たった一日で懐かしいなんて変だ。と思うけど本当に懐かしいんだからしょうがない。
しばらく歩いて建物の角を曲がるといつものベンチ。
アズサはドキドキしながら覗いていた。
「……いない。」
渉の姿は見えなかった。
アズサは小さく深呼吸するとそのベンチに座った。
「いないかぁ。」
アズサはベンチの上に膝を抱えるとその膝に頭を埋めた。
俯いているとだんだんと視界がぼやけてきた。
「う…。」
勝手に涙が溢れてくる。
アズサは涙がでると声が止まらない。
学校だろうが、外だろうが、映画館だろうが…。まったく傍迷惑な涙。
グッと堪えるアズサはそろそろ自分が限界にきていることがわかった。
どうせ声が出るなら思いっきり叫んでやる。
アズサは顔を上げると思いっきり息を吸い込んだ。
「わたるさんどこにいるんだぁ〜!ばかやろうぅぅ…ううぁ。」
アズサは思いっきり叫ぶとまた膝を抱えて嗚咽を漏らしていた。
「それってひどくない?」
突然の声にアズサの肩がビクッと震える。
顔を上げて見ると、アズサの顔を覗き込むように渉の姿があった。
「わたるさんっ!!」
アズサはその顔を首根っこを引っつかむように引っ張るとグイッと引き寄せた。
「わぁ。い…痛い…ってか苦しいいいぃぃ。」
渉は、アズサの腕をギブアップ。と言いたげに叩き反対の手はアズサの背中を擦っていた。
「ど…どこに。」
アズサは泣いていたせいで呼吸が上がっている。
ヒックヒックと言いながらも一生懸命話そうとする。
渉は力の抜けたアズサの腕を自分の腕と絡ませて、アズサの隣に座った。
「ん〜。ずっといたよ。後ろに。天気がいいからさ、芝生で寝転んでたらいつの間にかねちゃってたみたい。」
そういうと猫のような笑顔をアズサに向ける。
「そしたらさ、なんか俺に対する暴言を吐く奴がいてさ、それで目が覚めたってわけ。」
そう言うと、アズサに向かってチロッと舌を出した。
「だって…来たら…いっ…いなかった…ん…だもん。」
アズサは話終えるとまた涙が溢れてきた。
「あ〜もう。泣くなよ。泣くなんて反則だよ。どうしたらいいんだよ。」
渉は泣き止まないアズサにアタフタするばかり。
とりあえず、背中を擦ったり頭を撫でたり肩を叩いたり子供をあやす様にアズサにしてあげた。
それで落ち着いたのかアズサの息がだんだんと落ち着いてきた。
「ごめん…。もう大丈夫だから。」
アズサは鼻をズルズルと啜るとパンパンに腫れた目で笑ってみせた。
渉はホッと胸をなでおろすとアズサを包み込むように抱きしめた。