No.11
〜11〜
「わたるさん??!!」
何度呼んでも当の渉は肩で荒い息をしたまま動こうとしない。
本当にどうしたんだろう。
我慢できないって何なんだろう。
アズサは渉がどうなったのかまったく理解できないまましばらくこうしていたほうがいいんだろうか。と思いとりあえず手で届く範囲にある渉の背中を擦った。
しばらくして渉はアズサの体を一度きつく抱きしめるとやっと体を起こした。
「いったいなんだったの?大丈夫?」
さすがのアズサも不安になり、もしかしたら体の具合でも悪いのかと心配そうに渉の顔を覗き見た。
チラッと渉がアズサを見る。
が、すぐに目を逸らすとああぁぁ〜といいながらベットに仰向けに倒れてしまった。
「ダメだよ。そんな顔しないで。」
え?
アズサはまったく意味不明。1人で話を進める渉についていけない。
すると渉がこんどは起き上がると膝に肘を付きその上に顔を預けて困った顔をした。
「だからぁ。そんな顔しないでよ。押し倒したくなるじゃん。」
それだけ言って顔を手の中に埋める。
「さっき押し倒したじゃん。」
アズサは行動に移してから言うなっ!と言う意味を込めて頭をかるく小突いた。
「違うよ。いや…そうなんだけど。つまり…エッチがやりたくなるってこと。」
えっ…ちぃいいいいぃぃぃ??!!
顔がボッと一気に熱くなる。
アズサは素早く渉の隣から身を引くとベットの端まで行った。
「そんなに逃げないでよ。」
あからさまに逃げられたショックで渉は心底傷ついた顔をした。
「だって。そんなこと言うから。私たちまだ付き合ったばっかりなのに。それに…私したことないし。ちょっと怖いって言うか…。それに…。」
アズサはテンパってしまうとやたらとしゃべりだす。
渉は始まったよ。とニヤニヤ笑いながら近づいてくる。
さらにテンパってしまったアズサの顔はゆでタコのよう。
「ちょ…ちょっとまって。よく考えよう。ね??……心の準備ができてないっていうか…。」
もう逃げ場のないアズサは目をギュッと瞑ると口をパクパクさせている。
何か言わなければと思いながらも言葉が出てこない。
目を瞑った暗闇が更に暗闇の中へと引きずりこまれる。
目の前まで渉がきたため部屋の電気の明るささえも瞑った目の奥に届かなくなってしまった。
ちゅゅゅ〜〜ぅぅっ
「!!!」
思いっきりよだれのつくぶっちゅぅってなキスを唇にではなく瞑っている目にされた。
「うおぉっ!」
アズサは思いっきり吸われたせいで目玉が飛び出すかと思うくらいビックリしてしまった。
「なっ…何やてんの??」
「だって、わちゃわちゃになってるんだもん。落ち着いてもらおうと思って。」
そういうと渉はいたずらな目をした。
「ありがとう。お陰で落ち着きました。」
アズサはよだれのついた目をマスカラが落ちないようにそっとティッシュで拭おうと鏡を覗くとすでに両方の目がパンダのようになった自分が映っていた。