鬼ごっこで捕まった鬼
いつもの日常というのは突然終わるもので、俺の日常も今さっき終わりました。
ー数時間前ー
「…」
ユノンは黙って空を見ている。
「どうしたんだ?早く帰るぞ」
何故かさっきからずっと黙ってチラチラと空を見ていると思ったら次は立ち止まって空をじっと見つめ始めた。
「くる…」
ユノンがボソッと呟いた瞬間、空から大きな黒い塊が降ってきた。
「ぐっ!」
風圧に耐えきれずに吹き飛ばされる。
さっきの黒い塊はのそりと動き始めた。
「ドラゴン…?」
空から落ちてきたのは正真正銘ドラゴンでしかなかった。
「シウ、逃げて」
ユノンはすでに刀を構えて、もうすぐに攻撃のできる体制に入っていた。
「逃げてって…お前はどう…」
「いいから早く!」
ユノンの殺気に威圧され俺は後ろを振り向き足を踏み出そうとするが、それは後ろから聞こえる小さな笑い声と大きな爆音で止められた。
「鬼さんみーっけ、ふふふ」
空からは次々とドラゴンが出てくる、そしてそれを操っているのは恐らくあのローブをかぶった男。
「鬼さん、鬼ごっこしよ」
男はそういうと左手をユノンの方へ向けた、すると今まで周りをのそのそ動いているだけだったドラゴンたちが一斉にユノンの方へ走り出した。
「ふん!」
それをユノンは刀で弾き飛ばしていく。
すごい、あんな動きしてるのは初めて見た。
見たって言うか、ドラゴンが斬られていくところしか見えないユノンの姿が全く目でおえない。
ドラゴンは次々と倒れていく、が全く減らない、ローブの男がドラゴンが倒れるたびにまた生成しているんだ、アレをどうにかしないと。
ドラゴンをかいくぐる、そしてローブの男を後ろから殴ろうとしたその時、身体中に激痛が走る。
「ダメだよーガキー背後から人を殴る時は殺気を消さないと」
こいつ、背後の俺に気づいて一瞬で俺の体中に攻撃を当てやがった。
これは、内蔵が…
だめだ、勝てない、こいつには。
すべてを一瞬で悟った。
「シウ!」
向こうからそんな声が聞こえた、と思ったらユノンが目の前に立っていた。
あれ、さっきまでドラゴンと戦ってたのに。
「シウに指一本でも触れてみろ…お前を殺す!」
「こわーい、鬼さんこわーい…けど」
ユノンは後ろに吹き飛ぶ。
「鬼さん、よわーい」
ローブの男はユノンの方に歩いていく。
「ま、て、ユノンに、近づく、な…」
男の足を掴んでユノンの方に生かせないようにするが男には無言で蹴られる。
手を離してしまった、まずい、ユノンに触れるな!
「じゃあガキー、この鬼さん連れてくねーばいばーい」
「ま、て!」
男は強い光を発してどこかへと消えてしまった。
「あ、ぐああああ!」
守れなかった、また守れなかったいつも守って貰ってばかりで、そんなことはどうでもいいユノンがユノンが連れ去られた!
「くっそ…あっ、刀…かたな!」
首を無理やり動かして刀を探すと、ドラゴンの死体に刺さったままになった刀を見つける。
刺さったままの刀に向かって這いつくばってよじ登る。
「うぐっ…」
体が痛い。
「忘れない、忘れはいぞ!」
刀身を思いっきり握る、すると手からは血が流れる。
「この傷は、この手に出来た傷は、お前につけられた傷だ、いつかこの傷の仮はお前に返す!」
昇って来る太陽は、醜く泣き、刀をつかむ俺の姿を嘲笑うかのようだった。
この話は次回作に繋がります。