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異世界冒険譚〜俺の両親とかがチートすぎて身が持たない件〜  作者: うるふパンツ☆ぴこまる
序章 ◆転生先の世界がなんか怖いんですけどっ?◆
2/5

プロローグ02臺 叶

 ◆だいかなえ視点◆


 ……パチッーー


 部屋の明かりが自動的に付いて私は目を覚ました。


(もう起きないといけない時間なの?)


 五分程惰眠を貪ってから渋々と重たい体をゆっくり動かした。なんとか上体を起こす。


 背伸びをして肩や腰のコリをほぐすと、大きく張った自分のお腹を優しく撫でた。


「おはよう、夜疾ちゃん。今日もお母さん張り切っちゃうぞ〜!」


 今日は朝の支度を済ませてから産婦人科のある病院へ行く日だ。


 久しぶりに息子の顔が見られると思うとつい小躍りしてしまった。


(いけない、いけない。夜疾ちゃんがビックリしちゃうわね)


 昨日の晩にトースターにセットしておいたパンがちゃんと焼けているのを確認する。


 部屋の明かりが自動的に付いたように、同じ時刻にパンを焼き始めるように準備しておいたのだ。


 外はこんがり、中はふわふわのパンにイチゴジャムを塗りたくり、冷蔵庫から牛乳を取り出そうと手を伸ばした。


 すると、最愛の息子が中からお腹を蹴ったりしているのが分かった。今日はいつになく暴れている様に感じる。


「ふふふっ。なにしているのかなー?元気だね〜」


 と、お腹を撫でてこの幸せにしばし酔いしれた。


 腕時計が差した8時30分の針を見てハッと我に帰る。


 そして私服に着替えながら朝食を食べるという、いつもの芸当を息子に披露して車に乗り込んだ。


 病院までは車で約30分。エンジンを掛けてから車内のカーナビに設定された「八乙女やおとめ総合病院」のキーをタッチすると、カーナビから小音量の無機質なアンドロイドボイスが流れた。


「八乙女総合病院まで自動運転で参ります。シートベルトを着用して下さい……シートベルトの着用を確認致しました。出発ボタンを押して下さい……それでは出発致します」


 アクセルが一人でに沈み込み、車が微速で前進。やがて速度を上げて敷地内から国道へと合流していった。


 今や車は「自動車」というその名の通りの乗り物になりつつある。技術は絶えず進化していくものである。


(あ、そうだ。夜疾ちゃんに音楽を聞かせてあげなくちゃ)


 胎児は成長すると母親の声や光に反応する様になる。もし、そんな大切な時期に何もしてやらなかったら可哀想ではないか。


 いつものように、元気で優しい子になるよう音楽は洋楽をチョイスする。


 音楽がスピーカーから流れ始めると、先ほどまでモゾモゾと身体を動かしていた息子が次第に大人しくなった。良い子守唄になったのかもしれない。


(私も寝たいけど、最低限の危険予測はしておかないとね〜)


 気合を入れ直してハンドルを持ち、いつでも止まれるようにブレーキの上に足を軽く乗せる。


 ーー約30分後、道中これといった危険な場面は無く、目的の八乙女総合病院へ到着した。


 入れた気合が骨折り損になってしまったが、何か起こってからでは遅い。息子の命を守れたと思えればこれくらいは当然の事である。


 病院の中へ入り受付を済ませてから、待合室の空いている席がないか辺りを見回す。


(しまった……来るのが遅すぎたか……)


 仕方なしに壁にでももたれておこうと思ったその時、異様に手足の長いスタイリッシュな老父がスタッと席から立ち上がった。そして私にドヤ顔を向けて「座れ」と言いたげな視線を送ってくる。


 ここで老人だからと拒否すれば、逆ギレされてしまう可能性があったので、それを避けるためにも会釈をして素直に好意に甘えることにした。


 譲ってもらった席に座ると、隣の席で母親の膝の上にちょこんと座っている小さい女の子が舌足らずな声を上げて私を指差した。


「お母さん、あの人どうしちゃったの?なんかすごいよ?」


「こら、あんまりジロジロ見るんじゃありませんっ。絵本でも読んでなさいっ」


「ハーイっ!」


 母親が小声で「すいません」と頭を下げたので、手を横に振って「いえいえ」と愛想笑いを浮かべた。


 隣で絵本の読み聞かせをしている親子の様子を横目で見守る。


(私もいつかはこうなるんだろうな〜)


 その光景を思い浮かべるだけでもうお腹いっぱいである。


(さ、待っている間に情報収集、情報収集っと……)


 スマホにイヤホンを差し込んでテレビをつける。朝は見る事が出来なかったニュースをチェックするためだ。


 私がよく見るニュース番組は「たのマントさんの最新ニュースホイホイ」である。


 ニュースは既に途中から始まっており、パッと中東らしき景色が映し出された。現地のアナウンサーが建物の屋上から街の様子をについて語っている。


『え〜見てください。昨日の現地時間、午後21時43分頃、反政府軍が発射したと思われるロケットミサイルがここジニュエ市中心部へ向けて数十発撃ち込まれ、そのうちの一発が国境なき医療団が活動を行っていた建物に命中し、こちらの映像の様な瓦礫となってしまっています!

 尚、この爆撃による死傷者は132名までおよび、日本人がこの爆撃に巻き込まれたかどうかは現在調査中であるとの事です!以上、ジニュエ市郊外から三雲がお送り致しました!』


『あ、はい、三雲さんどうもお疲れ様ですー……。いやぁ、それに致しましても泣いておられる方々を見ていると、こちらとしても心が痛いものですね〜。』


『はい、そうですね。現地へ派遣された自衛隊および民間軍事会社の方々の活躍に期待いたします。……では次のニュースです。東京新橋でまたもーー』


 次のニュースをぼうっと聞きながら旦那の事を思い浮かべた。


(あの人は今頃向こうで何をしているのかしら……。帰ったら無線でも送ってみようかしらね?)


 そんな事を考えていると、診察の順番が回ってきて名前を呼ばれた。


「臺さ〜んっ!」


「はいっ!」


 意気揚々と立ち上がってから慌ててお腹を抑える。


(またやっちゃった!ゴメンね夜疾ちゃんっ!)


 私はてへぺろ、とお腹を撫でて心の中で謝ってから受診室に入るのだった。

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