重力の傾いたこんなセカイで
時々、思うことがある。
僕にだけ傾いた重力が働いているんじゃないかって。
選んだ道を間違えたと思った。
自分が良いと思った道は想像していたものとは違った。
自分が険しい坂道と思って登っている道を、まるで平面みたいに登って行くみんなを見ると、自分はここにいるべき人間ではない気がした。
降りるタイミングは逃してしまった。
だから僕は、他人よりも大きな労力をかけて、この坂道を登っていた。
・・・そう、思っていた。
気付いたのは、この山の上だった。
振り返って見えたものは、坂の上からでも輝いて見える景色。心沸き立つ気持ちが、皮膚を貫いて飛び出しそうだった。思わず笑いがこぼれる。
「こんな景色、登ってた僕にしか分からない。」
気がつけば、坂道を駆け始めていた。
今まで通り抜けてきた道を全力で駆けるのは、控えめに言っても、快感だった。
道行く人が僕を笑う。それすら心地よい気分だ。
そして僕は、ここに戻ってきた。
僕の輝く場所。そこにはまだ道が無限に伸びている。
僕は、また新しい道へと一歩、足を踏み出した。
この道でたどり着いた場所に、どんな景色を見るのか。
楽しみで仕方ない。
時々、思うことがある。
僕にだけ傾いた重力が働いているんじゃないかって。