僕のバグった日常
「こらー! いつまで寝てるの! 早くしないと遅刻するよ!」
「やっべー!遅刻するー!」
パンを加えて走って学校へ急ぐがどうやら間に合いそうにも無い。
「っち! やばい!」
口汚い言葉を吐き、近くの電柱に飛び掛りつつ体当たりを食らわせる。すると、突然後ろ向きに高速移動を始める。普通に歩いているのだが、どう見てもその速度は異常である。後ろ向きに歩く速度としても人間が出す速度としても。
「また車に轢かれそうにならなきゃいいなぁ」
そんなことを思いながら、高速移動で学校に向かう。
だが、学校近くまで来て無慈悲にチャイムが鳴ってしまう。
「やべぇなぁ。校門にいるの体育の高林じゃん」
鬼教師の高林先生は遅刻する生徒にホームルーム中の十分間を説教で終わらせるというまさに恐るべき教師だった。場合によっては一時間目にも遅れるというまさに鬼の所業である。
「くそう。こうなったら、これを使うぞ」
バック高速移動を止めて、校門近くでとある行動を行う。
「チェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェックチェック」
少し歩いてはチェック、少し歩いてはチェック、少し歩いてはチェックと唱え続けて、校門を通る。鬼の高林先生の検問を無事突破。
「なんなんだあいつは……」
高林は不気味な生徒に話しかけることをためらったのであった。
「ふぅ、遅刻したけど授業にはちゃんと出ないと……」
一時間目は体育。体力テストでいくつかの種目を行うのだ。真面目に測定をしよう。
まずは五十メートル走だ。スタートダッシュが肝心だといわれている。
「位置について、よーい!」
ゴールとはまったく逆の方向へクラウチングスタートのポージングをする。
「どん!」
スタートと同時に今朝行った高速バック歩行を開始した。とても早く走れるので遅刻しそうなときにはかなり重宝する。
あっという間にゴールを走り抜けたのだが、鬼の高林先生で無い別の先生からあんな走り方は認められないと言われたので仕方なく、再測定する。
今度は普通にクラウチングスタートだ。
「位置について、よーい! どん!」
今度は地面を軽くスライドする要領でどんどん、走り抜けていく。ルート二走法は伊達じゃない。
今度も割りとあっという間にゴールした。
今度はたち幅跳びだ。
同じ校庭の砂場で行う。今回使うのは輪ゴムと肯定のその辺の石を使う。
「次!」
「はーい」
自分の番が来たのでとりあえず、輪ゴムと石を手に持つ。
高速で石を構えて放つ、わずかに体が浮くので地面に落ちる前にまた石を地面に放つ。それを十回ほど繰り返したところで着地する。飛距離は二メートル五十センチ。中々うまくいったほうだと思う。
〜〜〜〜〜
体育の授業が終わり、みんな教室に戻ろうとする。
自分は、階段のところに体を押し付けて、『チェック』を連呼する。
ある程度回数を重ねたところで普通に歩き出すと突如変な浮遊感に見舞われて、地面の中に落下していく。だが、歩みを止めず、どんどん進んでいく。ある程度地面に沈んでいくと空に瞬間移動する。どんどん歩いて座標的にこの辺が一番いいだろうというところで自由落下する。
「よし、うまくいった」
うまく自分の教室の前に落下する。たまに屋上に落下してしまうので何度も練習を重ねたのだ。
教室に入り、着替えてから次の授業を準備する。
次の授業は数学の計算問題の小テストだったはずだ。
「勉強面倒くさいなぁ」
〜〜〜〜〜
面倒くさいので白紙で出してやった。所々にふざけているとしか思えないような図形を描いてやったが何の問題も無い。
「おい、ちょっとお前こっちこいよ」
こんなのもいつものことで、一つの財布が入ったポーチを腰につけて席を立つ。
体育館裏は人目に付きにくいので呼び出される場所として最適だ。
「お前最近調子乗ってんだろ? ああん?」
典型的なちんぴら、不良といった風貌の奴らに絡まれる。
「俺らさ、最近お金に困ってるのよ。ちょっとお金貸してくれない?」
「いいよ。はい」
財布の入ったポーチから財布を取り出し渡す。
学生証やカードなんかは抜き取り、渡す。
「お前いい奴だな。話が分かってくれるしな」
「困ったときはお互い様だよ。あはは」
「また相談させてもらうわ」
そう言って不良たちは去っていく。
そしてポーチの中身をその場から動かず中身を確認する。
その中には先ほど渡したはずの財布がある。中身もカードと学生証以外は無事だ。
「増殖成功」
〜〜〜〜〜
放課後、特に部活もやっていないので図書室に少しよって帰る。
その帰りに野球部の流れ弾が飛んでくるのだが、
『あぶない!』
とっさに、飛んでくる野球ボールに背中を向けてタイミングを計りバックステップを行う。
すると、丁度胸の辺りを野球ボールがすり抜ける。
ふぅ、危なかった。あんなものが心臓近くに当たったら、肋骨がひどいことになっていただろう。
転がっている野球ボールを拾い、ピッチャーにフルパワーで投げつける。
ごうぅん!
と空気が風を切る音をしてピッチャーのミットに綺麗に収まる。
『あ、ありがと!』
「がんばれよー!」
こうして僕は家に帰る。
〜〜〜〜〜
「お使い行ってきて、あと三分でタイムサービスが始まるから気をつけてね」
「分かったよ。行ってきますー」
近くのスーパーでのお肉の特売。
ここから高速バック歩行で二分半。十分間に合う。
スーパーについてからお肉争奪戦が始まる。
終了間際になるころにはなんとかお肉を手に入れることができた。
そこからレジに駆け込む。
レジを通すと同時にタイムサービス終了となる。というのは、タイムサービスが終了するとお肉は通常料金で再び売られ始める。
だが、それと同時にあたりがまばゆい光に包まれて一気に時間が跳ぶ。
気がつけば買ったお肉で作られた夕食で食卓を囲んでいた。みんな笑顔だった。
だが最後に、
「あー、タイムセールが失敗しちゃったよー! やり直し!」
という空耳が聞こえてきたのだが、いつものことなので気にしない。
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「っていう小説考えたんだけどどうですか? 主人公の名前は温穂正一という名前で」
「いいんじゃない?(自棄)」
バグというより大抵がTASネタや小技な件。