第五話 愛のための略奪、まるで罪のような
人々が恐怖で叫ぶ声がする。
「死神が来る!」
「命を奪いに我々の枕元へ!」
「死神が来る!」
「二度と目覚めの無い悪夢を届けに!」
「死神が来る!」
「耳を澄ませば家の扉を叩く音が!」
ひとり、ふたり、三人四人五人・・・
人がいなくなっていく。誰も死に逆らえず、耳元で囁かれたが最後。
世界が寂しくなってゆく。静かに終わってゆく。
やがて星を星と呼ぶ者がいなくなり、鳥を鳥と呼ぶ者がいなくなる。
世界は無名になっていき、誰も何もわからなくなる。
「死神の欲しいものはただひとつ!」
あの娘だとみな気づいた。
早く生贄に捧げなければと町の人は武器をとって娘の家を取り囲んだ。
「私さえ行けば」
「駄目だ!君を失いたくはない!」
刹那、青年は娘を庇ってたった一発の銃弾で命を落とした。
「・・・アラン・・・?」
冷たい体を抱き寄せても、空っぽになった体ただの空蝉。
それは、もう娘の好きだった、愛した人じゃなくなった。
そう、またいなくなるの。また私を置いて、この暗い世界に閉じ込めるの・・・
歌が聞こえる誰かいつか歌った歌が
(天使)
♪ねえあの姿が見えるかい
愛しいもの失い絶望する姿が
君の目には何が見える
世界は何色に見える
でもね何も見えなくても ぬくもり一つあればいいと
世界はいつも美しくて残酷で 醜くて優しいね
ねえ死神 見てごらん あの子がほら 泣いているよ・・・
つづく




