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システムE ver.2  作者: 八澤
第ニ話 弟と女子高生と一緒に女子高生を導く時にこっそりと逃げ出してヤる
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ver.08


 廊下にサソリの姿は無い。シーンと、擬音が響いてきそうなほど、静寂に包まれていた。私達は、壁に身を寄せながら、小走りで進んでいく。曲がり角に会うたびに、息を潜めて確認した。回数を熟すたびに疲れてきたけど、油断は出来ない。

 学校の外へ出られないので、私達は、まず二階への道を探すことにした。マコ曰く、二階への階段は玄関の近くにあるらしい。調理室は校舎の端にあるから、迂回する形になるので結構距離がある。校庭を進めば大幅なショートカットになるけど、あんな開けた場所を進むのは、サソリに、どうぞお食べになってください、と言っているようなものだ。

 私の記憶だと、一階の校舎には、いくつか二階への階段があったはずだけど、それはどれも消えていた。最初から階段が存在していなかったかのように、道が消えている。でも、マコが言うには、一つだけ、階段が残っているらしい。そこも壁に遮られているけど、マコ曰く、見せたいモノがあるんだと。

 やっと、私達は玄関へ戻ると、二階への階段を見つけた。足音を立てずに、そっと上る。踊り場があり、その先からは、マコの言う通りに壁があった。上下左右、びっちりと隙間なく、分厚いコンクリートのような材質の壁が出来ていた。もう見るからに私達の攻撃如きでびくともしないとわかる。触れると、変な艶があり、水のような感触すらあった。

「これ見てよ」

 マコはそう言いながら、壁に触れた。私が触ったところではなく、もっと端の部分だ。すると、マコが触れた部分が黒色へと変色してそこから模様が浮かび上がってきた。

「これは……あのサソリ?」

「言われてみれば、そっくりですね」

「うん、やっぱりそう見えるよね。これは俺の予想なんだけど、この壁を壊すには、あのサソリを倒すことが条件なんだと思うんだ」

 だから、マコは私にサソリを殺すことを提案したのか。私的な願いだと、どこかの宝箱に鍵でも落ちていて、それで開くような展開を願っていたんだけど、そう現実は上手くいかない、か。

 ため息を一つ、ゆっくりと腕を腰に当てると、私は伸びをした。

「行こう」

「行くって?」マコはわかっていながらも問う。

「そりゃ、あのサソリを倒しに行くんだよ。それ以外に、何かあるの?」

 マコは何も答えない。ミナミも、うんうんと頷いているだけで、何も言わない。

「でも、どうやって倒すの? まず場所がわからないし、恐いのは、あの子サソリに先に見つかって、囲まれること。いくら三人いたって、何百匹も集まられるとヤバい。俺はほとんど一対一のスキルしか無い」

 確かに、マコの言う通りだ。私は言わずもがなまだスキルは少ないし、【SP】も同様。マコも、ほとんど肉弾戦になってしまい、広範囲の攻撃は無い。

「私は、一応広い範囲に攻撃できるスキルがあります。しかし、あまりに多いとそれも焼石に水になってしまいます。それに、私にはまともな近接攻撃がほとんどありません。必然的にスキルに頼る形となってしまいますので、【SP】が尽きたらそこで終わりです」

「となると、方法は限られる……」

 私は階段を下りた。二人も続く。

「何かあるの?」

「うん。まず、あのサソリを呼び出す」

「でも、それはどうやるの……」「最後まで聞けッ」「はい」「でね、呼び出します。そして、三人で集中砲火して倒します。私一人でもそれなりにダメージを通せたんだから、三人で一斉攻撃すればイチコロ。で、そのためには、まず姿を現せる必要が、ある」

「セセラギさん、あのサソリに一人で立ち向かったんですかッ?」

 隣でうんうんしていたミナミが突然声を上げた。

「うん。隙を見つけて攻撃してたら、逃げた」

「恐く無かったんですか?」

「いや、それほど恐いとは思わなかった」

 嘘はついていない。今思い出しても、あのサソリと対峙した時に、私は恐怖を感じることは無かった。

 むしろ、高揚していた。

 性的快感とはまた違う、とてもハッピーな感情に私は包まれていたんだ。普段の生活では決して得ることの出来ない快感で、心が揺れていたのを、思い出す。

「……す、凄い」

 ミナミは本当に驚いている。「そんなに驚かなくても」

「いえ。……流石セセラギさんですね」

 尊敬の眼差しと、私を持ち上げる言葉。普通なら、その言葉で嬉みを味わえられるはずなのに、あまりいい気分にはならない。ミナミの言葉や気持ちではなく、それ以前のところで、何か引っかかるシコリのような物を感じたからだ。

「あ、でもねーちゃん、あのサソリを倒すでしょ。その後はどうするの? サソリを倒したところで、子サソリに囲まれるのはかなり危険じゃん」

「そこは大丈夫」だと思う。

 私は意気揚々と最後の階段をジャンプして降りると、二人を見る。両者とも、異なった目で、私のことを見つめている。一方は尊敬と何か、もう一方は不安と焦りだ。

「ボスを倒せば、雑魚は消えるに決まっているから」


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