ver.013
階段は一直線に、永遠に続いているのかと思うほど伸びていた。もう確実に五階分は登ったと思った時、やっと、前方から、微かな光が煌めくのが見えた。
私達はそれを確認すると、一気に足を速める。
扉があった。
光は、そこから漏れている。
先頭で辿りついた私は、扉を開けた。
その瞬間に、まず私にぶつかってきたのは……音だった。テンポの良いBGMが流れていた。意識しないと、頭の中で無限にループしてしまうような曲だ。
次に、明るい光が目に差し込む。視界が開けて、二階の様子が、私の目に飛び込んでくる。
輝いていた。
それにとても清潔で、ゴミ一つ無くて、巨大な空間が目の前に広がっていた。
……巨大な、空間が、目の前に、広がって……?
廊下は無い。壁も無い。教室や、その他色々、……ここは創立百年を超えた小学校などではなく、どう見ても、
『遊園地』だった。
――遊園地。
遊園地、もしくはテーマパークだ。ジェットコースターなどのアトラクションが備え付けられている。
……えっと、ちょっとタンマ。
目を瞑る。今さっき、私はモンスターと死闘を繰り広げてきたから、頭が混乱しているんだろう。疲れて、ちょっと頭が馬鹿になったんだ。記憶や何かが混同してしまった……。大きく深呼吸をして、再度目を見開く。あぁ、やっぱり遊園地があった。
近場には煌びやかに光る馬や人形が備え付けられたメリーゴーランドがあり、その周りに様々なアトラクションが並んでいる。遊園地の中心には、巨大な観覧車があった。……デカすぎる。頂上部は雲に当たりそうなほどの高さを有している。その観覧車を囲むように、路線が宙を走っていた。多分ジェットコースターかな。
「きゃッ」
「うわぁ、はぁ?」
ミナミとマコはほぼ同時に、この遊園地を目の当たりにして声を上げた。
そうだよね、私達は今まで小学校の一階に居て、二階へ上がっただけなのに、そこは遊園地が展開されている。面積がどうとか、校舎に入りきらないとか、そういう次元の話ではない。
……嫌な予感がして、振り返ると、果たせるかな、扉は跡形も無く消えていた。背後には、派手なペイントが塗られた壁があるだけで――この壁も、一階の校舎を囲う壁と同じく、空高くまで聳えていた。
閉じ込められてしまった。
「空がある。……色は綺麗だ」このどぎつい原色のどこが? と突っ込む気になったが、まだ口が動かない。
「ここ、本当に学校の中……ですよね?」ミナミは震えていた。
「だと思いたいけど、私にはそれを信じる自信が無い。私達は一体何に巻き込まれたの」
私は頭を押さえながら近くにある小奇麗なベンチに座った。質感はちゃんとある。もしかして、今、私は夢を見ているのかと、自分の頬をつねってみたけど、痛い。ついでに、マコの頬もつねってみるけど、結果は同じだった。「痛い痛い痛いッ」
私はポケットからケータイを取り出すと、開く。画面は相変わらず私のステータス画面だ。レベルアップしたから少し変化があったけど、それだけだ。根本的な部分は何も変わらない。
セセラギ
DP SP
300/300 7/7 ●●●●●●●
①閃光 ②ビルドレ ③瞑想ギガドレ
私につられて、二人も自分のケータイを確認している。表情を見るからに、同じく何も手がかりが無いのだろう。
「あー、帰りたい。帰ってシャワーを浴びたい」と呟きながら立ち上がった。「進むしか、無いのかな?」
「うん、扉、消えちゃったし……。ここは、ゲームみたいに言えば、二面だと思う。また、俺達三人でボスを倒さないと、三階への道は開かれない」
マコは淡々と口にした。その言い方があまりに断定的過ぎて、私の癪に触れた。
「うぅ、お嬢様が頂上で亀甲縛りされているわけでもないし、影がうろつく塔に紛れ込んだわけでもない。明確な理由が無いのに、どうして上に行かなきゃならないのよ」
「もう戻れないんだから仕方ねーよ。もしかしたら、上に行けば、元の世界に戻れるかもしれないじゃん」
上に行っても、また摩訶不思議な世界が広がっているのでは? それを延々と繰り返すのではないか、と思うと気が重くなる。脱出する方法を頭に浮かべながら、遊園地の中を探索することにした。




