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小悪党  作者: ひそか
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はじめました


あたしは今日悪い事をする。


現在朝の六時。春のまだ仄暗い朝日の中、あたしはいつもより一時間早く学校へ向かっていた。


左の肩に通学鞄を下げ、空いている左手で花瓶の入った紙袋を持っている。まだこの春買ったばかりの新しい鞄は、あたしの母が「女の子なんだから」と、あたしが選んだ布製のトートバッグを却下して押し付けてきた、世間の女の子に人気らしい名前も知らないブランドの物だった。


本人以上に娘の高校デビューに力を入れていた母さんは、娘と友達みたいな関係になるのが夢だったらしい。あたしが娘という時点でその夢は過去形だが。


右手には菊の花束を抱えている。朝の六時に菊の花束を抱えている少女、かなりシュールな光景、というか見たら背筋が冷たくなる光景だ。そんな事を考えながら一人で笑った。更に不気味だ。


交差点で渡って、裏門から校舎に入る。こんな早い時間に学校へ来た事は小中合わせて一度も無かったから、はっきり言って開いているかどうか不安だったけど、門は開いていた。良かった。


速やかに教室へ向かい、一度荷物を置いてから廊下の水道で花瓶に水を汲んであたしの席の後ろ、小林輝次郎こばやしてるじろうの机に置く。バイタリティー溢れる名前だが、本人は至って物静かな美青年だ。成績も優秀で人当たりも良い、絵に描いた様な優等生である。


持って来た菊の花を花瓶に埋けて整えた。なかなかに良い出来だと思う。


まだ冬服の黒いセーラーブラウスに付いてしまった菊の花粉を手で払い、鞄を持って廊下に出る。


花瓶を入れてきた紙袋も、花束を包んでいた包装紙も鞄に入れた。よし、これで生徒達が登校してくるまでトイレに待機していれば完璧だ。


ふん、自分が誰からも好かれていると思い上がっている奴の、裏切られたかの様な顔が目に浮かぶぜ。


あたしが働く悪事とは、まさか花瓶に爆弾を仕掛けてにっくき小林輝次郎を木っ端微塵にしてやろうだなんて悲惨なものじゃない。漫画でよくある、登校して来たら俺の机に菊の花が!ガーン!みたいな精神的な攻撃を狙ったものだ。


こちらが奴に受けた傷の代償には程遠いが、まだまだだ、これで終わりではない。


見てろよ!目に物見せてやる!


あたしは今日から小林輝次郎をいじめる事にしたのだ。


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