『化け物退治へ』第3話
長らく投稿出来ずに申し訳ありませんでした。表現の仕方にいろいろと悩んだり、リアルが忙しかったりで投稿出来ませんでした。また、感想も書いて頂きありがとうございます。
竜臥山脈、山頂付近ーーーー
俺とアヤノは転送装置がある建物から雲海の中にそびえ立つ、黒い古城へと来ていた。
「………閉まってるな」
「(こくん)」
ただ、キース達は城門を通った後、閉めてしまったみたいで力自慢のアヤノでも開けることは出来なかった。
「………武器があったら壊せるかも」
「武器、か………」
だが、手元には武器になるような材料がない。材料があれば何か作ってあげられるのだが……… 周りを見渡しても石材くらいしか見当たらない。後ろを見ると乾き切らない血の跡が点々と橋から門の中へと続いていた。
(急がないとヤバいかもな)
若干の焦りを感じ始めた時、アヤノに袖の端を引っ張られた。
「………あれ」
アヤノが指差した所には雲にかかってていて見えにくいが、門の脇から下方の城壁が崩れて内部が見えている箇所があった。そこを使えば中に入れるだろう。ただ一つの問題を解決すれば、だが。
「道は無ければ、階段もない。つかまって降りる場所もないが、どうやって降り…… まさか」
俺が最後まで言う前に、アヤノは俺を抱きかかえた。
「………いい?」
「あぁ、そうなるよな」
アヤノは青い顔をしている俺を見て頷くと、そのまま下へと飛び降りた。
「あああああぁぁぁぁぁぁああああああーーーーーー」
古城、エントランスーーーー
雲海にそびえ立つ古城の内部は華美な装飾はされておらず、映画やドラマで見られるような甲冑や絵画などの内装はない。城内だけが時間が止まったような静寂が支配するこの空間を無粋にも破る者たちがいる。
「キースさん、も、もうやめましょう。化け物退治なんて」
「う、うるさい! ここまで来たんだぞ! 必ず仕留めるんだよ!」
城内に逃げ込んだ、キース達であった。リトルベルクを出る時は意気揚々としていた彼らではあるが、今はそれは見る影もなくなり、50人程の若者たちも10人以下まで減っていた。生き残った者は装束が無残な状態であり、武器も使い物にならなくなっていた。
「で、でももう人数は十人くらいにまで減って、武器も食いもんもないんですよ! どうやって倒せっていうんで、うぐ!」
キースは先ほどからあきらめようと言ってやめない若者を殴って黙らせた。その光景を残りの若者たちは冷たい目で眺めていた。
「と、とにかくここは城なんだ! どこかに武器庫とかあるに違いないんだから探しにいけ!」
キースは若者たちに命じるとキースと2人の若者を残し皆、渋々に三々五々に散っていった。
ケルト村を出たばかりのキース達はまだよかった。大型の獣が襲いかかってきても皆で一斉に囲んで叩き込む。そういった戦法で麓の森の中を進んでいった。最初は怖がっていた者も何人かいたが、何回か獣を撃退している内に自身がついてきて、いつしか彼らは馬鹿騒ぎをしながら森を進むくらいの余裕が出てきた。
だが、所詮商人や豪農の息子、あるいは食い詰め者の集まり、戦闘技術が高いわけでも力があるわけでもない。キースも狩りは経験があっても、自分が”狩られる側”になることはない。素人の慢心がいつしか化け物の接近を許していたのだ。
気付いたのは夜営の準備を始めた時だった。誰かの一言がキース達に異変を気づかせた。
「何か、静かすぎないか?」
森の中では鳥や虫の鳴き声、風が木々の間を抜ける音など、絶えず何かしらの音が聞こえてくる。だがそれらのどれも聞こえてこない状態に皆が話しを止めて周囲を確認するように見渡すが、森に異変は見当たらない。
「おい、誰か様子見て……」
「グオオオオオォォォオォオオォォォ!!!!」
キースが言い終わるより前に獣の咆哮によって皆の視線は一点に集中した。そこには見たことの無いような巨大な獣の金色の双角は斜光によって妖しく光っていた。唸りながらこちらを睨みつける獣は一声吠えると手近にいた若者に襲いかかった。その者はあまりの衝撃で動けなかったのか、獣の丸太のような前足で払われ、そのまま大岩に身体を打ち付けて物言わぬ死に体となった。
それを皮切りに、各々が武器を持ち、一斉に襲いかかった。今までの通りにやれば上手くいく、そういった自負心が彼らを駆り立て、勇んで得物を構え巨大な獣を囲んだ。
だが、そんなもの獣に取ってはなんの意味ももたなかった。凶悪な牙、鋭い爪、鞭のようにしなる大きな尾、巨大な獣はそれらを使いあっという間に若者たちを肉塊へと変えていった。次第に味方の数が減り、決して敵わない存在であることが分かってくると、若者たちは武器を投げ捨て、獣に背を見せて逃げようとするがそれさえも獣は許さず、皆死んでいった。
キースとその取り巻きは早い段階から馬を使って獣から逃げ出していた。ほとんどの若者たちが獣にかかりきりだったので、キースたちは気付かれずに戦場を後にすることができた。後ろから獣の咆哮と残って戦っている若者の悲鳴を背にしてキースは必死の形相で振り向きもせず、馬を駆けさせた。
(あんな化け物、勝てるはずがないだろうが!!!)
キースは内心で舌打ちし、必死に馬を走らせたが、ここは深い森の中。また日も沈みかけていたので辺りは暗闇に包まれ、身動きが取れなくなってしまった。どこか一夜を過ごす場所を探していると、淡く青白い光が木々の間からチラチラ見えていた。こんな森の奥深くに人がいるのかと訝しむが夜の森で野宿するよりは幾分かマシと考え、光の元へと移動した。
だがそこには人家は無かった。石造りの祭壇のようなものが山裾に建てられており、その祭壇に作られているドーナツ型の石像の中心が淡く光っていたのだ。あまりに異様な光景に木の陰から出られないでいると、腹の底に響くような足音とともに例の化け物が姿を表した。突然の化け物の出現に一同は度肝を抜かれ、少しも動くことは出来なかったが、よくよく見るとどうも様子がおかしかった。俊敏な動きを見せた後ろ足は片方が引きずっており、青白い光に照らされた顔には目に3本の矢が刺さって潰れていた。呼吸も荒く、日没前に見せた猛々しい姿は面影をなくしていた。
ーーーー勝てる
何故そう思ったかは分からなかったが、今まで畏怖の対象であったものが、無残な姿を見て確かにそう感じた。知らずの内に柄に手をかけ引き抜くと草むらを掻き分け一気に化け物に駆け寄った。
「うおおおぉぉぉぉおおお!!!!!」
キースは大きく振りかぶると後ろ足に向かって一気に振り下ろした。だが、体表・体皮は思った以上に硬く、叩くだけに留まったが、化け物は痛みに耐えかねたように一声吠えると長い尾を鞭のように使ってキースを祭壇の台座に叩き付けた。
「キースさん!」
取り巻きたちは剣や槍を手に取り、キースを守るように化け物を囲った。化け物は唸り声を上げると金色の双角からバチバチという音が鳴ると周りに雷えのようなものを落とし、周囲の取り巻きを吹き飛ばした。その中には衝撃でドーナツ型の石像の青白い靄の中へ飛ばされた者もいた。
「ち、ちくしょう! こんなのか、勝てねぇよ!」
「なんだ、今のは霊術か?!」
「キ、キースさん、どうしましょう」
祭壇近くにいるものはどうやらまだ息があるようだ。皆がキースと化け物を交互に見て、不安そうな視線をキースに送る。化け物は襲っては来ないがそれでもキース達を睨み付け、少しの身動きさえも許さない様子だった。
(くそ、少しでも逃げようとすれば殺られる)
「おい、皆!こっちだ!」
真後ろから声をかけられ、振り向くと先に靄の中へ飛ばされた者が顔を出していた。キースと生き残った取り巻きは考えるよりも先に靄に向かって走りだした。後ろで化け物が吠え、地面を蹴る足音が聞こえるが、誰も振り向かずに靄の中へと駆け込んだ。
靄の先には石造りの建物の中のようだったが、誰もが足を止めずそのまま出口に向かって駆けて行った。自分たちが通れるならば、化け物も通れるのではと感じたからだ。建物を出ると目の前には大きな橋とその奥には古城がそびえ立っていた。キース達は負傷していたが、残りの力を振り絞って全力で古城の門に向かって駆けて行った。
本当の地獄は、その門の先にあるとも知らずに………
定期的更新できれば良いですが、しばらくリアルが慌ただしくなりそうなのでまた更新がだいぶ先になるかもしれません。こんな小説ですが、よろしくお願いします。




