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はい、異世界統轄局です3 *ドアマット令嬢案件*

掲載日:2026/03/23

 『異世界転生』『異世界転移』『異世界召喚』とは、元の世界で一般人だった人が異世界へ訪れることである。一般的に『異世界転生』『異世界転移』の場合、元の世界で病死だったり、トラックに轢かれたりなどの事故死だったり、稀に大往生だったりする。


 異世界人が、元の世界での知識や常識を活用することで、この世界を変えていく。それにより危機を回避できたり、逆に危機に瀕する場合もある。そこで異世界人が、世界の均衡を崩さないため管理、取締をする組織がある。


 それが、異世界統轄局(Another World Control Division)。通称、A.W.C.D。

 

 

***ドアマット令嬢案件***



プルルル、プルルルルル……。


「ーーはい、異世界統轄局 窓口の山口です。転生ですか? 転移ですか?」


 窓口の仕事とは、発明王が作った魔道具フォンでお客様からの話を聞き取り、迅速に判断し各部署への連絡すること。ここにくる話の内容は似たようなものが多く、ようするにテンプレ対応にはマニュアルがある。私もそれに則って、お客様から内容を聞き出し必要事項用紙に記入していく。


「転生ですね……はい、はい。失礼ですが、ご本人様でいらっしゃいますか? え? あ、知人。……出入りの商人。ご本人様は……あ、連絡を取れる状況ではないと……。ご本人様のお名前は……はい、ブラウン伯爵家のシャーロット様。貴方様のお名前も宜しいですか? ……はい、エディオン様。……えぇ、ビッガー商会の、はい、支店長……と。失礼ですが、ブラウン伯爵令嬢とは、どのようなご関係で? ……はい、先代ブラウン伯爵の代より御用達に。……ええ、現伯爵であるブラウン伯爵令嬢のお母上様が亡くなられてから……はい、義理のお母上様が連れ子と共に伯爵家に入り……はい、ブラウン伯爵令嬢が使用人のような事をさせられていると……。ブラウン伯爵令嬢が転生者だと思う根拠は? ……はい、ブラウン伯爵令嬢が持ち込んだ手製の……焼菓子。……聞いたことのない名前……はい、フィナンシェ。なるほど、確かにこの世界ではありませんね。かしこまりました、では、こちらからのご連絡は……はい、エディオン様宛で。はい、では、失礼致します」


お客様との通話を終え、自分の記入した必要事項用紙を再度確認し魔道具フォンの短縮番号を押した。コール音がニ回鳴ったところで、担当部署に繋がった。


《お待たせしました、転生部ラノベ課、西川です》

「西川くん、お疲れー。山口だけど」

《おー、ぐっさん。お疲れ、今日は、なんなん?》

「今回は『ドアマット案件』かなぁ? 連絡が本人じゃなくて出入りの商人で、連絡先もその商人宛だから、信憑性はあるかなーって」

《あー、このメールな。了解、ほなこのまま俺がやっとくわ》

「あれ? 今、持ってる案件ない感じ?」

《あー、前回の案件終わっての休み明けやからな》

「マジか、私的には西川くんで助かるけど」

《せやろ? まぁ、また連絡するわ》

「よろしくー」


それからニヶ月後、私直通の魔道具フォンが鳴った。今回も内線の呼出音なので、他部署から調査報告だろう。


「はい、窓口の山口ですが」

《うっす、俺、西川》

「あ、お疲れー。この前の案件? 珍しく時間かかったね」

《それな。後で、報告書はあげるんやけどなーー》


 西川くんの報告によると、シャーロット・ブラウン伯爵令嬢はやはり転生者だった。そして案の定、ドアマット令嬢だったそうだ。本来の身分としては、爵位相続権を持つ未成年貴族なので、今回、彼女には緊急措置と暫定判断が下り保護対象となった。今はA.W.C.Dの管理下にある施設に滞在しているそうだ。

 保護後、医師による診察が行われ背中や腕、脚に残っていた痕が見つかったという。それらは転倒では説明できない打撲や蹴られたであろう痣、踏みつけられたような跡、鞭の痕だった。骨折などの痕跡がなかっただけ良かったのかも知れない。でも、それよりも衣食住の管理状況が酷かったらしい。着用していた使用人用の服の状態、季節に合わない生地の薄さ、偏った栄養で折れそうなほどに細い身体。彼女は物置で寝起きさせられていたようで、その部屋を確認するとベッドが入らない狭さで、薄っぺらい毛布だったであろうボロボロの布が一枚と魔道具の魔電灯が主流であるのに蝋燭が唯一の灯りとして割れた皿の上にあったそうだ。このことから未成年の相続権保持者に対して、伯爵家では体罰が日常的に行われていたと認定されたそうだ。

 主導していたのは継母であり、連れ子の義理妹は加害に積極的に関与していた。さらに問題視されたのは、使用人たちも加担していたことだった。実父は、直接手を下してはいないが、シャーロット様が成人するまでの中継ぎの立場にありながら見て見ぬふり。つまり、保護義務違反。

 

 そして、伯爵家の内情を探っている間に発覚した虚偽申告。実は義妹だと思っていたら、シャーロット様よりも三歳上で本当は義姉だったという事実。それに関しては、シャーロット様も驚いていたそうだ。

 ちなみにビッガー商会の支店長エディオンさんは、シャーロット様に対して淡い恋心があったようでヒーロー気取りであった。でもシャーロット様にとっては出入りの商人としか思っていなかったようだ。それもそのはず、エディオンさんとシャーロット様の年齢差は一五歳。貴族同士の結婚では、その差も稀にあるが、転生者のシャーロット様からするとロリコンとしか思えないとのこと。さすがに、西川くんもエディオンさんには伝えられなかったそうだ。そりゃ、そうだ。


「それにしても、可哀想なヒロインを助けたヒーローをロリコン扱いって……」

《救われへんよな〜》

「で、時間かかったのはなんで?」

《あー、伯爵家に潜入していたんやけどシャーロット嬢が思いの外タフで》

「タフだからこそ虐められても持ち堪えたんだろうね」

《で、天然ちゃんやねん》

「あー……。潜入した人の苦労が目に浮かぶわ」

《せやろ? しかも無自覚で毒吐くからヒヤヒヤするんよ》


 結果的にブラウン伯爵家は国の管理下に置かれることになり、シャーロット様の実父、継母、義姉は平民落ちで鉱山での強制労働となったそうだ。


「で? シャーロットちゃんは?」

《あーまー……元気やで。体力が戻って元気が有り余ってるのと元社畜らしく、動いてないと落ち着かんと働き始めたんやけど……》

「……何かやらかした?」

《ああ。まー、あの子は良かれと思ってなんやろうけど、室長の頭指差して「ズレてますよ」って満面の笑みで言いよった。その時の室内の温度の急降下で風邪引くかと思ったわ》

「うっわー、その場にいたくない。ってか、ラノベ課にいるの?」

《いや、庶務課やで。ちょうどウチの課に郵送品を届けに来た時の話な》


 他にもあれこれ聞きたいけれど、さすがに魔道具フォンでする話じゃないと思い、終業後いつもの店で待ち合わせることに。

 未解決ボックスから先程の案件についての必要事項用紙を探し、『済』印をポンと押し、背面にあるキャビネットの『済ファイル』にファイリングした。


 ずっと鳴り続いてる一般回線の魔道具フォン。終業後の楽しみを想像しつつ、通話ボタンを押した。


「ーーはい、異世界統轄局 窓口の山口です。転生ですか? 転移ですか?」


***好評、販売中***

書籍『享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜』第3巻。

コミック『享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも、スキルだけで無双します〜 』第3巻。


WEB版に、多少加筆もしてますので、ぜひ!!

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