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第38章 聖剣を振るう者

 土地に明るい彼の案内で、盗賊団のアジトまでやってきた。


 谷に差し込む夜明け前の空気は冷たく、岩肌を伝って流れる風が肌を刺す中、足音を殺しながら斜面を下り、「……選ぶ場所は悪くないわね、逃げ道も、守りも、全部揃ってる」と低く呟き、隣を進むエドガルの動きを視界の端で捉え続けた。


「だからこそ、ここまで力を伸ばせたんだろう、だが――」


 彼が言葉を切り、視線を前方の岩陰へ向けた瞬間、小さく頷き、「ええ、守りが厚いってことは、まとめて叩けるってことでもある」と返し、剣の柄に指を掛けた。



 見張りに気づかれたのは、私たちが岩陰から一気に距離を詰めた直後だったが、「敵襲だ!」という声が上がるより早く、魔力を込めた一撃で足元を薙ぎ払い、「声を出す暇があるなら、足元を気にしたほうがいい」と言い放ち、崩れた体勢の男を叩き伏せた。


「派手だな」


「今さらでしょう、静かに終わらせたいなら、そもそも来てない」


 短い言葉を交わしながら、エドガルと背中を預ける形で進み、刃が交わる音が谷に反響する中、息を整え、「奥ね、あの光、間違いなく聖剣」と指先で示した。



 洞穴のように掘られた奥の広間で、聖剣を手にした男が立っていた瞬間、空気が変わるのをはっきりと感じ、「……使われる側の剣が、ずいぶん嫌そうな顔してる」と思わず口にすると、男は歪んだ笑みを浮かべた。


 おそらく、盗賊団の頭目だ。


「ほう、剣が顔をするか、面白いことを言う女だな」


「持ち主が最低だと、剣まで不機嫌になるのよ、知らなかった?」


 軽口を叩きつつも、一歩踏み出し、男の構えを観察しながら、「あんたがここまで逃げ回った理由は分かった、力を手に入れても、それを扱い切れないからでしょう」と言い切った。



「黙れ!」


 怒号とともに振り下ろされた聖剣の一撃を、正面から受けず、横へ跳びながらかわし、「ほら、振りが大きい、怒りが先に出ると、足元が疎かになる」と指摘すると、背後からエドガルが斬り込み、「終わりだ!」と叫んだ。


「まだだ!」


 男が剣を振り回し、衝撃波のような圧が広間を揺らした瞬間、歯を食いしばり、「……っ、好き放題やってくれる」と吐き捨て、魔力を一気に解放し、正面から踏み込んだ。



「エドガル、合わせて!」


「分かっている!」


 二人の動きが噛み合った瞬間、男の懐に潜り込み、「あんたの剣は、奪うためのものじゃない、終わらせるためのものよ」と告げ、そのまま渾身の一撃を叩き込み、エドガルの剣が追撃として振り下ろされた。


 鈍い音とともに男は崩れ落ち、聖剣が手を離れた瞬間、広間を満たしていた重苦しい気配が霧散するのを感じ、「……やっと、静かになった」と小さく息を吐いた。



 床に落ちた聖剣を拾い上げ、一度だけ刃を見つめ、「持ち主は、もう決まってるんだから、大人しく帰りましょう」と語りかけるように呟き、エドガルへ視線を向けた。


「終わったな」


「ええ、少なくとも、ここでは」


 彼の表情に、長年張り付いていた何かが剥がれ落ちたのを見て、余計な言葉を挟まず、「戻りましょう、話はその後でいい」とだけ告げ、聖剣を抱えたまま、アジトを後にした。

よろしければ何点でも構いませんので評価いただけると嬉しいです。

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