第38章 聖剣を振るう者
土地に明るい彼の案内で、盗賊団のアジトまでやってきた。
谷に差し込む夜明け前の空気は冷たく、岩肌を伝って流れる風が肌を刺す中、足音を殺しながら斜面を下り、「……選ぶ場所は悪くないわね、逃げ道も、守りも、全部揃ってる」と低く呟き、隣を進むエドガルの動きを視界の端で捉え続けた。
「だからこそ、ここまで力を伸ばせたんだろう、だが――」
彼が言葉を切り、視線を前方の岩陰へ向けた瞬間、小さく頷き、「ええ、守りが厚いってことは、まとめて叩けるってことでもある」と返し、剣の柄に指を掛けた。
◇
見張りに気づかれたのは、私たちが岩陰から一気に距離を詰めた直後だったが、「敵襲だ!」という声が上がるより早く、魔力を込めた一撃で足元を薙ぎ払い、「声を出す暇があるなら、足元を気にしたほうがいい」と言い放ち、崩れた体勢の男を叩き伏せた。
「派手だな」
「今さらでしょう、静かに終わらせたいなら、そもそも来てない」
短い言葉を交わしながら、エドガルと背中を預ける形で進み、刃が交わる音が谷に反響する中、息を整え、「奥ね、あの光、間違いなく聖剣」と指先で示した。
◇
洞穴のように掘られた奥の広間で、聖剣を手にした男が立っていた瞬間、空気が変わるのをはっきりと感じ、「……使われる側の剣が、ずいぶん嫌そうな顔してる」と思わず口にすると、男は歪んだ笑みを浮かべた。
おそらく、盗賊団の頭目だ。
「ほう、剣が顔をするか、面白いことを言う女だな」
「持ち主が最低だと、剣まで不機嫌になるのよ、知らなかった?」
軽口を叩きつつも、一歩踏み出し、男の構えを観察しながら、「あんたがここまで逃げ回った理由は分かった、力を手に入れても、それを扱い切れないからでしょう」と言い切った。
◇
「黙れ!」
怒号とともに振り下ろされた聖剣の一撃を、正面から受けず、横へ跳びながらかわし、「ほら、振りが大きい、怒りが先に出ると、足元が疎かになる」と指摘すると、背後からエドガルが斬り込み、「終わりだ!」と叫んだ。
「まだだ!」
男が剣を振り回し、衝撃波のような圧が広間を揺らした瞬間、歯を食いしばり、「……っ、好き放題やってくれる」と吐き捨て、魔力を一気に解放し、正面から踏み込んだ。
◇
「エドガル、合わせて!」
「分かっている!」
二人の動きが噛み合った瞬間、男の懐に潜り込み、「あんたの剣は、奪うためのものじゃない、終わらせるためのものよ」と告げ、そのまま渾身の一撃を叩き込み、エドガルの剣が追撃として振り下ろされた。
鈍い音とともに男は崩れ落ち、聖剣が手を離れた瞬間、広間を満たしていた重苦しい気配が霧散するのを感じ、「……やっと、静かになった」と小さく息を吐いた。
◇
床に落ちた聖剣を拾い上げ、一度だけ刃を見つめ、「持ち主は、もう決まってるんだから、大人しく帰りましょう」と語りかけるように呟き、エドガルへ視線を向けた。
「終わったな」
「ええ、少なくとも、ここでは」
彼の表情に、長年張り付いていた何かが剥がれ落ちたのを見て、余計な言葉を挟まず、「戻りましょう、話はその後でいい」とだけ告げ、聖剣を抱えたまま、アジトを後にした。
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