No.71 春のコーディネート
春の模様替えを検討している。
季節は春だと言うのに、窓一つ無い殺風景な茶室では季節感が出ないから。
しかし、カルカンは猛然と抗議していてずっと頭の上でばってんを作っていた。
「お金かかる、ダメ、絶対なのにゃ!」
「あー分かっておる分かっておる」
「もう本当にお金が無いのにゃ!」
仕方が無いので過去に購入してあった春物の服を切って布を用意し、それを飾り付けて気分だけ出してみる。
勢いよく服を切り刻んでいたらカルカンが顔を青ざめさせていた。
「どうしたのじゃカルカン?」
「それは購入金額が6桁の品じゃないのかにゃ?」
「細かいことは気にするでない」
カルカンは、既に購入している服にまで勿体ない病を発現させてしまう。一体、妾にどうしろというのか。
暫くやり取りをしていたらカルカンは納得の槌を打つ。
「そうだにゃ。ネットで出品するのにゃ」
「マルガリにでも出すのかぇ?」
カルカンが次々と服の写真を撮影し、ネットに出品をしていく。
二階にウォークインクローゼットを確保したとき、大量に購入して一度も着ていなかったのもあって、飛ぶように売れた。何故か水着は着用済みの方が高値で売れたが、購入者のことは考えないようにしておく。
「ふむ、まさか百万円にまで届くとは思わなんだ」
「ヨウが無駄遣いをし過ぎなのにゃ!」
総額としては、購入したときより二十分の一の金額になっているのだが、そこは言わぬが華というものだろう。
妾は家具のサイトを開いて眺める。
「この百万円の軍資金で模様替えの家具を……」
「ダメにゃ! ダメにゃ! このお金は大切に使うのにゃ!」
カルカンが家計簿を見ながらブツブツと呟いているが、足りないのなら増やせば良いと思って提案してみた。
「のぅ、カルカン。せっかくの春でもあるし、妾には妙案があるのじゃが……」
「このお金が泡と消えてしまう嫌な予感しかしないけど、聞くだけは聞くのにゃ」
まるで信用していないジト目を向けられてしまう。
だが、この作戦はいけるはずだ。
妾は競馬のサイトを開いてカルカンに見せてやる。
「春はクラシックレースが始まるし、天皇賞もあるのじゃ。これは一攫千金のチャンスじゃと思わんかぇ?」
カルカンは鼻で笑ってきた。
「ふっ……。何を言いだすかと思えば。私が前世で競馬で物凄い借金を抱えたことを知った上での提案なのかにゃ?」
「そういえば以前に語っておったのぅ」
カルカンはゲーム同様に賭け事も極端に弱い。前世で借金まみれになって妹に叱られた、と酔った際に何度も嘆いている。
しかし、妾も無策でこんなことを言いだしている訳ではない。




