No.7 やっつけなモーニング
「これは麗しい乙女のウインクというものじゃ。ほれ、分かるであろう? せっかく早く起きたのじゃ。ロイヤルなモーニングを食して見たいぞぃ」
未練がましく布団を掴みつつ要望を出してみる。
「干すから手を離すのにゃ。それにロイヤルなモーニングとは何にゃ?」
「知らんのかぇ? お札が2枚ほど戦死するリッチな朝食のことじゃ」
「渋沢が二人も戦死するのにゃ!?」
別に渋沢を求めてはいなかったが、上振れに勘違いされる分には問題が無いのでスルーして首肯する。
「ぐぬぬ。分かったのにゃ。いい加減未練を手放すのにゃ!」
半ば強引に布団をはぎとられた。
諦めてロフトから降りて朝食が用意されるまでの運動をする。
「おい。運動じゃないのかにゃ? なんでゲーム機の電源をオンにするのにゃ?」
「それはほれ、頭の運動だからなのじゃ」
この猫は全く持って空気が読めないようで、この恵まれた環境でゲーム三昧に溺れる思考が理解できないようだ。
カルカンは、酷く疲れたとでも言わんばかりに肩を落としている。
「はぁ……ま、ネットを要求されないだけマシだと割り切るのにゃ」
「おぉ、その手があったか!」
今も「しまったのにゃ」と声を出しているが、気が利くでは無いか。
カルカンの鼻先に指を押し付けながら宣言する。
「妾はネット環境を所望する」
「だ、ダメなのにゃ。だいたい最初の望みにネットは含まれて無かったのにゃ」
流石にネットを与えるのはまずいと考えたのか、必死に話題を反らそうとしてくるが、そうは問屋が卸さん。
「ゲームをするのにネットが必要であろう?」
「オフラインで遊べるゲームではダメなのにゃ?」
「いやいや、いまどき発売日当日パッチなんて当たり前じゃろ? 妾はパッチをあてるためのネットを所望しているだけなのじゃ」
しぶしぶと言った様子で人を呼び出して環境を整え始めたカルカン。
こんなにちょろくて大丈夫なのかとも思うが、妾の住環境が良くなる分には問題が無いし、このまま永遠に過ごさせて貰おう。
「にゃ? 永遠はダメなのにゃ。早めに封印されて欲しいのにゃ」
「ふむふむ。相分かった。ではゲーム機のブラウザで見れる全てのサイトを回ったら封印されてやろう」
「本当にゃ? 約束なのにゃ!」
そんな話をしていたらロイヤルな朝食が出てきた。
シャインマスカットやマンゴーなどの高級フルーツが多めで、無理やり価格を押し上げた感が満載である。
「こうなんというか、揚げ物とかは無いのかぇ? ハッシュドポテトやナゲットが欲しいのぅ。望むものを食せぬ内は封印されてやらんぞ?」
「にゃ? ワガママなのにゃ。明日には用意するのにゃ」
よし、言質はとった。これで封印を避けつつ食べたい物が何でも食べられるぞ。




