No.67 絶対に勝てないもの
「のぅ、カルカン」
「なんにゃ?」
「先日の件で妾は学習したのじゃ。この世には絶対に勝てないものがおると」
協定を結んでからというもの、心穏やかな日々が続いている。
少々カチンと来ることがあっても、あの時の恐怖を思い出すと簡単に水に流せてしまう。
カルカンはふんぞり返って鼻を鳴らす。
「そんなもん、そこら中にあるのにゃ。私はオキノ氏にも勝てないのにゃ」
「それでええのか? 光の神よ」
「物理的な力比べじゃないのにゃ! 彼女はマーケティングの手腕も優れているのにゃ」
また何やら結託しているのだろうか。
噂をすれば何とやらで、出前の注文が届いた。
「こんにちはー、猫飯亭ですニャン。出前のお届けにあがったニャン!」
天津飯を受け取りつつ、何で勝ったのかを尋ねてみる。
「オキノよ。カルカンとはどういった勝負をしたのじゃ?」
「勝負? そんなのしてないニャン。スイーツの宣伝をして買って貰っただけニャン」
そういって差し出されたチラシを見やる。
【期間限定の新商品スイーツが30%オフ!!】
先日の件もあるし、油断せずに裏面も見てみる。
【今なら先着10名の方に幻の地酒をプレゼント!!】
なるほど。カルカンの敗北が必至だったのは頷けた。
「ふむ。オキノよ。今から妾とカルカンで『絶対に勝てないもの』を出し合うからお主がジャッジしてくれんかの?」
「んー、ちょっとくらいならOKニャン!」
ちょうどここの配達の後は休憩に入る予定だったと快く承諾して貰えた。
カルカンに目配せをすると、訳知り顔で頷きを返してくる。
そう。この穏やかな日々は悪くはないのだが、張り合いもない。ここは穏便な代理戦争で、日々の生活にスパイスを加えるときだ。
「ぐだりまくってる会議での瞼の重さ!」
「寒い日に抜け出せないコタツでまどろむ時間!」
二人してバッとオキノに熱い視線を向ける。
「う~ん、難しいけど僅差でカルカン様なのニャン」
ぐぬぬ。ならば次だ。
「幼子の可愛いおねだり!」
そうして『絶対に勝てないもの』勝負は続き、五勝五敗で勝負は持ち越しとなった。
「やるのぅ、カルカン」
「ヨウもやるのにゃ」
妾たちは熱い握手を交わす。そして今日一番の『絶対に勝てないもの』がどれだったのかをオキノに尋ねてみた。
「う~ん、もっと強力なのが良かったニャン。今日は候補なしの引き分けニャン」
「そのようにゆうのならお主も一案だしてみぃ」
オキノが帰り支度をしながら捨て台詞を残す。
「温泉に浸かった後のキンキンに冷えたビール」
「確かに」
「確かに」
完全勝利をした王者オキノが去って行った。
「ヨウ、いつもの口調はどうしたのにゃ?」
「カルカン、お主こそ語尾が抜けておるぞぇ?」




