No.63 雪と山を堪能する
「ワハハハ! これは最高に楽しいのじゃ!」
「ヨウ、私の方が早いのにゃ!」
「む、勝負するかぇ?」
カルカンと共に大雪原を駆ける。
妾はスキー、カルカンはスノーボードでスラロームを繰り返し、巨大なシュプールを描く。
二人でウインタースポーツを満喫していた。
「霜は捨てんで正解じゃったのぅ」
「私のアイデアのお陰なのにゃ! わ た し の にゃ!」
「分かっておる分かっておる。褒美を取らせよう。今日は山梨、山形、山口を開けようぞ」
冷凍庫の霜が目立つようになってきたので取り除いて捨てようとしたら、「小さくなって雪山に見立てて遊ぶにゃ?」と、カルカンの提案があり、今に至る。
「私としては今回のはもう一声欲しいところなのにゃ」
「ふむ、では富山、岡山、和歌山も開けて山尽くしパーリィーはどうじゃ?」
「ヒャッハーにゃーー! 日本の山の日本酒を飲み尽くすのにゃーーー!」
カルカンが毎日のように蘊蓄を垂れるものだから妾も多少詳しくなった。
そもそも妾は都道府県を諳んじようとしても大体43~45くらいまでしか言えず、どうしても取り零してしまう。
しかし、カルカンは違う。
凄まじい地酒愛があり、日本酒以外にもご当地ビールやご当地ワイン、焼酎だろうが何だろうが勉強し尽くしている。
恐らく四大神の法則の男神とやらも、その百分、いや万分の一でも封印を進めるのに尽力して欲しいと思っているに違いない。
スキーゴーグルを少しずらしたカルカンが妾に笑顔を見せる。
「飲む前にもう一滑りいくかにゃ?」
「うむ。どうせ今日限りのゲレンデじゃからの。思う存分堪能しようぞ」
それから一時間ほどたっぷりと滑り倒し、サウナで整えた後に晩餐となった。
「山、山にゃ! うひょひょにゃー!」
6本の日本酒が山脈のように連なり、壮観な眺めである。それにしてもだらしないカルカンの顔が景観を損ねている。
「邪魔なのじゃカルカン。その顔のままでフレーム内に入ってくるでない」
「既に私の日本酒にゃ。インスタ用の撮影は別でやって欲しいのにゃ!」
日本酒に抱きついて離れそうにもないカルカンに呆れつつ、そのまま撮影した。
実に幸せそうなショットが撮れてしまう。
「なんともまぁ、お気楽なものじゃな」
──数日後。
「わははなのにゃーーー! 私の時代が来たのにゃ!」
「どうしてこのようなことになったのじゃ……」
気まぐれでカルカンの写真をSNSに投稿してみたら、「可愛い!」「幸せそう!」と大バズりしてしまい、前回の騒動で落ち込む前よりも圧倒的なフォロワー数を獲得してしまった。
調子に乗ったカルカンがふんぞり返る。
「さぁ、次の撮影のために新たな供物を差し出すのにゃ!」
妾は言われるがままに青森を差し出した。




