No.59 中身詐欺
カルカンは顔を紅潮させてプルプルと震えだす。
「こんな小さなグラスでは味が分からなかっただけにゃ! 一升瓶なら間違えなかったのにゃーー!」
カルカンは負け惜しみの言い訳を振り撒き、猛抗議を続けている。だが、その間にも一度も酒瓶を手放さなかったのはさすがにも思う。
「ヨウ! ヨウ! もう一回チャンスが欲しいのにゃーーー!」
喚くカルカンが少々面倒くさくなってきたので、テキトーにあしらいその日は終えた。
数日後。
「ふんふん。アウトドアもいいのぅ。妾もキャンプ飯が食してみたいのじゃ」
アウトドアカタログを見ながら妄想だけを募らせていたら、あれから不貞腐れて飲んだくれている猫が視界の端にいる。正直やりすぎたかとも思った。
「カルカンや。追加の日本酒を注文するから希望を出すのじゃ」
「どうせ私はお酒の味が分からないのにゃー……」
「あーもー、面倒くさい奴じゃの。前回のリベンジ戦で良いかぇ?」
カルカンのご機嫌を取るために電話で注文する。
いつものように酒屋の店主と雑談をしていた。
『ヨウちゃん、それなら一升瓶の空き瓶をプレゼントしようか? 何だったら中身を詰め直して届けてもいいし』
「誠かぇ? それなら御言葉に甘えようかのぅ。あ、そうじゃそうじゃ。敢えて逆にしてみるのはどうじゃ?」
酒屋の店主の提案もあったので、前回カルカンが言っていたように一升瓶で利き酒をやり直すことにした。
「カルカン。酒屋のおっちゃんの御厚意でお主のゆうとった一升瓶でリベンジ戦じゃ。見事名誉を挽回して見せよ」
「ふはぁ、なんらー? やるのかこらーなのにゃー、うぃっく」
カルカンのご機嫌をうかがっていたらすぐに配達は届いた。
酒屋の主人も妾を見てニッと笑う。
「ヨウちゃん、カルカン様。俺からの挑戦状だ。中身をしっかり当ててくれよ」
「うむ。また頼むのじゃ」
「毎度、御贔屓に!」
店主が去り、カルカンは酒瓶をじっと見つめている。
「これは中身は別物かにゃ?」
「そうじゃ。さぁ挑戦しようぞ」
そうして二人で飲み始めたのだが、尋常ではない難しさ。
「むむ、香りは三重の方が良い気もするけど、コクは和歌山かにゃ?」
「この静岡もフルーティーなのじゃ。さすがに酒屋を営んでおるだけあって、難易度が高いのを持って来たの」
静岡、三重、和歌山の一升瓶に詰められた酒を飲みながら、二人してあーでもないこーでもないと議論を繰り返す。
「妾には完全にお手上げなのじゃ。カルカンは分かるかぇ?」
「勿論なのにゃ。左から順に和歌山、静岡、三重なのにゃ」
「それでは瓶と中身が一緒じゃろ?」
カルカンが言うには店主は人が良いからサービス問題のはずだとのこと。
妾は答えの書かれた封を見てみる。そして答えを見て妾は固まった。
「してやられた……」
「ヨウ、早く答えを言うのにゃ!」
「答えはフランスじゃ!」
店主曰く、「中身は全部同じ銘柄の白ワインにしておいたよ」だそうで、妾たちの舌がポンコツなことが証明された瞬間だった。




