No.57 チラシの裏
そしてラスボスのチョコレート炒飯。ただならぬオーラを撒き散らしている。
カルカンもオキノもどこかエンタメ番組でも視聴しているかのような雰囲気だ。
妾は意を決し、レンゲで掬って口元へ運ぶ。
咀嚼すると口の中に油っぽさが広がり、鼻には甘ったるい香りが抜けてきた。
だが、味としては苦味が強いものの、食べれないこともない。
「う……む……これはこれで人を選ぶかもしれんが、好む人もおるのじゃろう」
妾がオキノを気遣ってどうにか食レポをひねり出すと、カルカンとオキノはびっくりした顔に早変わりした。
「マジかにゃ!? ヨウは舌がおかしいんじゃないのにゃ?」
「それを美味しいっていうのは正直感性を疑うニャン!」
いきなり二人とも掌を返した意見になっていて、妾の方が困惑する。
オキノはあわあわと顔を強張らせ、カルカンは露骨に嫌そうな顔をしていた。
「なんじゃその反応は? これはコンクールだかコンテストだかで優勝したスイーツではないのかぇ?」
するとオキノが先ほどのチラシをおずおずと差し出してきた。
一先ず受け取ってみるも、ただのチラシである。
視線を二人に向けると、二人とも手をクルクルと返す仕草を繰り返していた。
「ヨウ、裏にゃ! チラシの裏!」
「裏? 何をゆうておるのじゃ?」
「裏を見て下さいニャン!」
復活の呪文でも載っているのだろうか?
そんな疑問を抱きながらチラシを裏返して見る。
──チラシの裏面。
チョコレート餃子はパティシエコンクールで優勝!
チョコレート麻婆はパティシエコンテストで優勝!
チョコレート炒飯は罰ゲーム用に創作したジョーク商品です。食べてお腹を壊しても自己責任でお願いしますね。とっても不味いですよ!
「……なるほど」
妾はゆらりと立ち上がった。
ニヤニヤしていたカルカンと、おどおどしていたオキノの頭を鷲掴みにする。
「い、痛いのにゃ! ちょ! ちょっとした洒落でマジギレするのは無しにゃ!」
「痛いニャン! だから私はあの商品はやめといた方がいいって言ったのにニャン!」
「お主らの、墓碑に刻む言葉はそれでええのか?」
二人とも必死に妾の腕をタップしてギブアップをアピールしているが、こんなことで許されて良いはずが無い。
妾はそのまま二人を運び、強制的に炒飯の前に着席させた。
「さぁ、二冠達成のスイーツじゃ。二人はおいしく召し上がりたいじゃろう? いいから召し上がらんかい!」
「顔を直接炒飯に押し付けるのはやめるにゃーーー!」
「私、バイトの時間があるから帰っても良いニャン?」
「完食するまで息も出来ると思うな! たわけ!」
二人の阿鼻叫喚は一晩中続いた。




