No.56 ただならぬオーラを放つラスボス
「このチョコレート入り餃子は要らんじゃろ。チョコレート麻婆もじゃ。一番要らんと思ったのはこのチョコレート炒飯じゃたわけ! 何が光の神監修じゃ!」
「そういうことは食べてからゆうのにゃーーー!」
カルカンは両腕を掲げ、徹底抗戦の構えを見せた。
確かに食べても居ないのに全否定されたことには反発もしたくなるだろう。
百歩、いや万歩譲ってチョコレート入り餃子までは許そう。チョコレート麻婆も隠し味程度ならたまに聞くし、それもアリかも知れぬ。
だが、チョコレート炒飯だけはマジあり得ない。
「油で炒めるのとチョコレートが結びつかんとは思わんかったのかぇ?」
「そんなに言うのならヨウお得意のネットを検索してみるのにゃ!」
尻尾と態度が踏ん反り返っているカルカンを一瞥し、妾は検索をかけてみた。
「ば、バカな!? 人類とはそのような物にまで手を出しておったのか!? 幾ら何でも生き急ぎ過ぎじゃろぉが!」
「真の創作とは、先入観や固定概念を捨てる所から始まるのにゃーーー!」
ネットには無数のチョコレート炒飯が載っていた。
日本人というのはアホなのだろうか。食材に対し贖罪が必要だろう。
暫く口論を続けたが、結局は食べてみないことには評価不能という結論に至る。
ピンポーン!
「こんばんはー! 猫飯亭ですニャン! 出前のお届けにあがったニャン!」
「オキノ氏、ご苦労様なのにゃーーー」
さっそく注文してみたのだが、バイトの子はオキノという名前だったのか。
カルカン……意外に手が早いのか?
下世話な妄想も、麻婆の辛そうな香りとチョコの甘ったるい香りに阻まれる。
「のぅ、カルカン。これは本当に人の食べ物かぇ?」
「一つ一つの食材は食べれるものにゃ」
「オーダー通り、腕によりをかけて作ったニャン!」
満足げに頷くカルカンと、どこかソワソワしているオキノ。
目の前の食べ物をじっくりと観察してみる。
だが、幾ら観察しても一向に減ってはくれない。
カルカンはおせっかいにも箸とレンゲを渡してきて「さぁ、さぁ!」と言ったご様子。逃げ場はない。
「妾も覚悟を決めたのじゃ!」
まずはチョコレート餃子。メープルシロップにつけて食す。
中身はチョコレートのみだったので意外と悪くない。水餃子、焼き餃子、揚げ餃子のいずれもスイーツとして良く出来ていた。
「ふむ。これはこれで旨いのぅ」
次にチョコレート麻婆。隠し味程度ではなくふんだんに入っていてカカオ豆の香りが強い。
「苦い。苦いが悪くない麻婆豆腐なのじゃ」
カカオ豆90%チョコレートをぶっこんだ味。苦いし、舌は痺れ、喉はひり付く。
しかし食べれないことはない。寧ろ食べ進めるほどに癖になる味だった。
「妾が偏見に満ちておっただけかも知れぬ」
そしてラスボスのチョコレート炒飯。ただならぬオーラを撒き散らしている。




