No.43 帝国女帝で港区女子
再び手にした酒瓶へ大事そうに頬ずりをしながらカルカンがこちらをチラ見。
そして何を思ったのかヤレヤレポーズで語り出した。
「何を小さいこと言ってるのにゃ? バレなければアウトじゃないのにゃ。アウトじゃなければセーフなのにゃ」
そうか、妾はセーフだったのか。一つ頷いてカルカンを見やる。
「さようか」
「さようにゃ」
「「ワッハッハ!!」」
二人の高らかな笑い声が重なる。
「ワッハッハなのじゃー!」
「ワッハッハなのにゃー!」
そこから大宴会が始まったのだが、帝国建国についてカルカンが質問してきた。
「それで帝国を作る理由は何なのにゃ?」
「妾にはもっと格式が高い方が似合うと思わんかぇ?」
カルカンは小首を傾げている。やる気を出させるために一升瓶を二本取り出す。
「カルカンは山口のと広島のどっちがええ?」
「私は願わくば両方飲みたいのにゃ! 格式サイコーに似合ってるにゃ!」
当たり前のことしか言えないカルカンには広島だけを渡す。
「港区女子よりも帝国貴族令嬢の方が格が高そうじゃ。そうは思わんか?」
「思うにゃ思うにゃ! 私の日本酒愛と同じぐらい深く思うにゃ!」
妾は満足げに一つ頷いて山口も渡す。
カルカンは右手に広島、左手に山口を持ち、それぞれをラッパ飲みし始めた。
「にゃっにゃーーー! にゃっにゃにゃっにゃ♪ 幸せ二倍なのにゃ!」
「それで手続きは終わっておろうな?」
いささかはしゃぎすぎなカルカンを窘めるつもりで発した言葉が波紋を呼ぶ。
「この通り万事完了してるにゃーーー! うぃっく」
新たに作られた妾の戸籍の欄を見て、驚愕のあまり手が震えていく。
「の、のぅカルカン? この女帝という肩書はなんじゃ?」
「んにゃ? 帝国なのだから女帝じゃ無いのかにゃ?」
女帝では困る。身分は高い方が良いが、公爵まで。
「これでは念願の婚約破棄が出来ぬではないか!」
妾の叫びに対し、カルカンは暫し真顔。
そして日本の一升瓶をどちらも空にした。
「ぷはーーーにゃーーー! 冗談は顔だけにするのにゃ。そもそもそんなお子様体形で婚約は夢の又夢なのにゃーーー! 子供は寝る時間にゃ?」
こんなこともあろうかとネット通販の「極悪な枝も一発!」の触れ込みで有名な高枝切りバサミを取り出す。
買っておいて良かったとつくづく実感。
カルカンは焦った様子で肉球を突き出し、妾を制してくる。
「ちょちょ! なんでそんなものを持ってるにゃ?」
「坪庭があるのじゃ。いずれ必要になるかも知れんからの?」
さらに間合いを詰めるとカルカンは泣いて騒ぎ出した。
「身長もオツムも足りないからって背伸びはしなくて良いのにゃーー!」
「よっし、そこに直れカルカン。斬首とギロチンと打首獄門。優しい妾が好きな刑を選ばせてやろうぞ!」
「それってほぼ一択なのにゃー!」




