No.38 二千ならお値打ち価格
あれから毎日が充実していて、昨日は一日中ゲーム三昧。
今日は朝からサウナで整え、これから遅めの朝食をエレガントに頂くところ。
問題は、向かいの席で頭を抱えてブツブツ言っているカルカンが不快なだけ。
「カルカン、さっきから何をブツブツゆうておる?」
「あぁぁーーー……困ったのにゃーーー!」
「話を聞いてやるから申してみよ。なんならブランデーも付けようかの?」
カルカンも口では「困ってるにゃ」と言いながら尻尾はルンルンに弾む。
ブランデーを二人分用意し、朝食のミルクフレンチトーストもお裾分け。
「では、話を聞こうぞ」
◇◆◇◆◇
「と、言う訳なのにゃ」
「なるほどのぅ……もう一杯いるかぇ?」
「頂くにゃ!」
朝食を終え、ブランデー入り紅茶で人心地つける。
話を聞いてみれば何のことは無い。予算が足りないということだった。
最近、潤沢にあったはずの予算がほとんど消えたらしい。
「しっかし、そのヨウとやらは、金遣いが荒すぎるのぅ。ガツンと言ってやったらどうなのじゃ?」
カルカンは「何コイツ信じられない」とでも言わんばかりに目を丸くしている。
「金遣いを何度窘めてもダメだったのにゃ。一体どうすれば良いにゃ?」
「して、カルカンや。予算は完全にアウトな領域なのかぇ?」
カルカンは耳と尻尾を垂れさせて力なく頭を振る。
「まだ完全なアウトでは無いにゃー」
「ならば良い! アウトじゃなければセーフなのじゃ!」
「セーフだったのにゃ!?」
妾が鷹揚に頷くと、カルカンの瞳に生気が戻り始めた。
「そうじゃ。知らんかったのか? それでカルカン。妾は新たに部屋を増築して出張エステを受けようと思っておる。叶えてはくれんかの?」
「分かったのにゃ。私は砂風呂もアリだと思うにゃ」
「よっし、それも望みに追加するぞぇ」
そうしてリラクゼーション周りが充実していく。
数日は穏やかな日々が続いたのに、またもカルカンが一人で騒ぎ始めた。
「ヨウ、ヨウ! 聞いてるにゃ?」
「今、盆栽の手入れが忙しいからちょっと待っておれ」
せっかくの心穏やかな気分も、忙しないカルカンの催促で台無しに成り出す。
しかもカルカンは妾の尻尾を引っ張ってアピールを続けている。
「痛い、痛いのじゃ。このインドア・ガーデンルームではせっかち厳禁なのじゃ」
カルカンは回り込んで盆栽の横に立ち、妾をジト目で一瞥した。
「ヨウ、昨日までこの盆栽は見なかったのにゃ。随分と良さそうな品なのにゃ」
「おお、分かるのかカルカンよ。今朝届いたのじゃ。このクオリティは素晴らしいのじゃ。しかもお値段がお手頃で二千万円と……」
金額を告げた瞬間、カルカンは畳に突っ伏して号泣を始めた。
「またそうやって無駄なものに大金を使ってるにゃー……」
「無駄な物とは失敬な! この盆栽は五千万クラスの逸品ぞ? 二千万ならお値打ちじゃろう?」




