No.32 断崖絶壁のスポーツクライミングで差し迫る制限時間
「にゃっにゃにゃっにゃ♪」
「いくら食べても無くならないのじゃ!」
小さくなった体で飲食を堪能する。
ラザも小さくして三人で楽しもうと提案してみたが、ラザは今が極限まで小さくなった状態とのことでその夢は叶わなかった。
「ラザの件は残念じゃったが、この小さな体は本当に便利じゃのぅ」
「思いついた私は天才なのにゃ!」
できればもっと早く思いついて欲しかったが、それを口にするような無粋なマネはやめておく。
「音響も映像も大迫力なのじゃ!」
今までは小さくて物足りなく感じていたプロジェクターのスクリーン。
今は見渡すほど雄大なスクリーンへと生まれ変わっている。
狭いからと小さなスピーカーで諦めて妥協していたのに、安物の重低音はビリビリと振動が全身に伝わってくるパワーがあった。
「カルカン、つぎはウイスキーにするか?」
「はいにゃ。飲むにゃ!」
このとき妾は浮かれきっていて、小さな体で起こる問題に気付いていなかった。
「ついでにゲーム大会としゃれこもうぞ!」
「協力プレイかにゃ? 望むところにゃ!」
今のサイズではゲーム機のコントローラーを持つことはできない。
なので二人してコントローラーの上に乗り、ボタンを踏んで操作をしていく。
「ホホホ、これは良い運動になるのじゃ! どうしたカルカン? 動きが鈍ってきてるのじゃ!」
「にゃ……ちょっと気持ち悪いにゃー……うぷ」
酒を飲みまくった後に運動をさせたせいか、カルカンが早々にリタイア。
一人になってしまったので映画鑑賞に切り替える。
「大迫力なら、こっちにするかの」
酔っていた勢いもあり、普段なら見ないホラーを選択。
一人でチビチビ飲みながら、チェーンソーを持った仮面男が夜な夜な殺戮を繰り返すホラーを見ていた。
「な、中々怖いでは無いか。のぅカルカン?」
「スピー……」
返事は無い。カルカンは屍と化しているようだ。
厠に行きたくなってきたが、今一人で行く勇気は出ない。
「一先ず見終えるのじゃ!」
そうして何とかラストまで見終える頃には尿意が限界に近づいていた。
「よし、妾にかかればホラー映画なぞ大したこと無いのじゃ。では厠にいくとするかの」
怖さもあって意味もなく大声で宣言してみる。
そこで、本当の恐怖を味わった。
「遠い……遠すぎるのじゃ!」
厠までの距離が10倍以上に伸びていて辿り着くまでもひと苦労。そして──。
「高すぎじゃーーー!」
巨大な便器はまるで超難関のスポーツクライミング施設のよう。
登りきれる自信はない。
妾は自尊心を捨てた。
◇◆◇◆◇
「んにゃー、良く寝たにゃ。にゃ? 泡の抜けたビールかにゃ? 変な味するのにゃー」
「お、おいカルカン、そこにあったペットボトルキャップのを飲んだのかぇ!?」




