No.31 泡の海
色々と買い物をし過ぎたのもあって、手狭になり始めた妾の都。二畳の領土。
「のぅ、カルカン。狭く無いかぇ?」
「狭いにゃ」
カルカンはそっぽを向いたまま背中越しに答えた。
構わず愚痴を続ける。
「置き場所が無いのじゃ」
「4階にはまだスペースがあったのにゃ」
確かに4階にはまだスペースの余力がある。ついでに言えば3階も問題ない。
だが、梯子での上り下りはしんどい。
厠に向かうのも大変で、4階から1階に降りる途中で危うかったこともある。
「厠を4階にも設置するのはできんのかぇ?」
そう告げたら、カルカンは酷くつまらなそうに妾を一瞥し、隣室へ移動してしまう。そして物を調達して戻ってきた。
「にゃ! どっちにするにゃ?」
右手に尿瓶。左手にはオマル。カルカンは目を閉じて神様気取りの様子。
妾は肩をガックリと落とす。
「わ、妾にも羞恥心というものがあるのじゃ……」
「ヨウ、このやり取りは飽きたにゃ」
そう。既に50回目のやり取り。水回りの問題で1階以外に厠と蛇口は無理だと言われていて、話題にするたびにカルカンが今のセットを持ってくる。
さすがにそれらを選ぶ気にはなれなかった。
「じゃが1階は狭いじゃろ? 楽しく飲むスペースも無くなってはおらんかぇ?」
「むむむ。確かにヨウの言う通りなのにゃ」
よしよし。カルカンの興味を引けたようだ。
広さ問題はどうにかしたい。利便性で1階に物が集中するのを避けたい。
暫く唸っていたカルカンが、耳と尻尾をピンと伸ばした。
「小さくなれば相対的に広くなるにゃ!」
「ほぇ?」
そんなことが出来るのか。
さっそく変化の魔術具というのを渡して貰い、二人して試すことに。
魔術具に力を委ねてみるとシュルシュルと小さくなり10cm程度になった。
「カルカン、カルカン! これは凄いのぅ! これなら大量の物を1階に置けるのじゃ!」
「んにゃ? 物は無理なのにゃ。私たちが小さくなってその空いたスペースを有効活用するのにゃ!」
カルカンはペットボトルのキャップへビールを器用に注いでいる。だが、流石に泡のコントロールは難しかったようで、泡の海に溺れていた。
今のを見て分かったが、カトラリー全般を極小のものにすれば生活スペースは増えることに気が付いた。
「ようやった、カルカン! 今宵は宴じゃ!」
「にゃっにゃにゃっにゃ♪」




