No.30 バターには抗えない
「で、随分とハイペースで飲んでおるが、相談内容は耳に届いとるかぇ?」
「ぷはーーーにゃーーー! 届いてる届いてるにゃーーー! 五臓六腑に染みわたるにゃーうぃっく。もう一杯あればきっと良案が思いつくにゃ!」
何だか泥沼にハマっているような気がするのは妾だけだろうか。
しかし、ここまで投資した分を損しないためにもここは追加投資一択。
「ほれ、記念すべき三十杯目じゃ」
「ふにゃーー……奥さん、このハンペン硬いのにゃーーー」
「だれが奥さんじゃ、たわけ。それにそれは座布団じゃ。ヨダレを垂らすな」
完全にへべれけ猫と化してしまい、全く役に立たなくなってしまった。
どうしてこうなったのか。
気分転換のために妾もビールを注いでみる。
グラスに注がれる音を聴き、ホップの香りを嗅いでいる内に天啓を得た。
「これじゃーーー! これならいけるのじゃ!」
「にゃー……厚揚げ……嚙み切れないのにゃー」
カルカンは既に夢の中へ落ちた。なので一人で準備を進める。
電話からホットプレートと食材各種を注文した。
有料会員限定の即日特急お急ぎ便で頼んだだけあってすぐに届く。
妾はいそいそと準備を始め、全てのセッティングは完了した。
「さて、どれから始めるかの。やはり音が派手なこちらからか」
ニンジンとキャベツを炒めて「ジュージュー」という音を奏でていく。
しなったら肉も投入。さらに麺も追加していき、仕上げに入る。
「ほれ、ソースを投入じゃ!」
ソースが焼ける音と香りが部屋に充満し、食欲へダイレクトアタック。
ラザが耳と鼻をヒクつかせている。
『う~? いい香り~、おいしそ~ござる』
最強クラスの音と香りを持つ焼きそば。かなり惜しいところまで持ち込めた。
「ふむ、この程度では妾の手には堕ちぬのじゃな。それでこそ攻略しがいがあるとゆうもの」
本命で勝負をかける。
別のホットプレートを取り出す。卵液へたっぷり浸した食パンを並べていく。
「さぁ、この凶悪なものに抗うことができるかぇ?」
バターを投入したら「ジュワ~」という華やかな音と強烈な香りが漂い出す。
ラザが……ラザがついに動いた!
『う~、おいしそ~匂い~』
「フフフ。トドメを指してやろうぞ」
メープルシロップを熱されたホットプレートへ。甘い香りがさらに高まる。
粉砂糖をふりかけ一先ず完成。
しかしここからがラザ専用の追加攻撃。
「ほ~れ、たっぷり用意したのじゃ」
用意しておいた大量の粒餡を乗せ、フレンチトーストでサンドにしていく。
「小倉フレンチトーストじゃ!」
『たべたいござる~!』
ヨダレを垂らした笑顔のラザが妾の手元へ釘付けになっていた。




