No.22 酷く曖昧なBPM
「仕方ないにゃー。私が講師をしてやるのにゃー」
ようやくカルカンが音楽講座をしてくれることになった。
これまで独学でやっていたので色々と手探りだったがこれで一安心。
「では、質問プロンプトを発表するのじゃ」
「プロンプトとは何にゃー?」
「ぉほん。この楽譜に載っている記号を一通り教えて欲しいのじゃ。それで教える際には擬音での説明を一切無し、身振り手振りも無しじゃ。できるかの?」
一つ頷いたカルカンが楽譜を覗き込み始めた。
説明を文章で書いて貰っても、未だに擬音のようなどっちつかずの表現ばかり。
「カルカン。お主、文章もファジーすぎて全然要領をえんのじゃ」
「んにゃ? そんなことは無いはずにゃー」
「例えばこの片目の記号とかの説明が曖昧なのじゃ」
カルカンの説明だと「フェルマータ」と書かれている目のような記号。
説明には「普通より気持ち長く伸ばす。ふんわり伸ばす。いい感じにテキトーに」と書かれている。これでは分かりようが無い。
「折角プロンプトで擬音を封じたのに、これでは何も分からんではないか」
「そんなこと言われても……フェルマータの説明はこうなってしまうのにゃー」
自分の誤謬力の無さを棚に上げるカルカン。
妾は肩を竦め、首を小さく振りながら嘆息した。
「しっかり確実な説明をして欲しいのじゃ。で、このバツマークはなんじゃ?」
「バツ? あー、だからダブルシャープなのにゃ」
「要らんじゃろ!」
半音あげて、さらに半音あげると書かれているが、それは一音あげるのと何が違うのかがサッパリ分からん。
妾の抗議を聞き流すかのように、カルカンは手元のビールを飲み干す。
「んなの私に文句を言われても困るにゃー! ぷはーーーにゃーーー!」
妾は納得できず地団駄を踏む。
「それにじゃ! リット、ラール、リテン、こやつらはなんじゃ? 統一せい!」
「リタルダンド、ラレンタンド、リテヌートにゃ。リテヌートは別物にゃ」
「なら、どのBPMまで遅くすれば良いのかきちんと説明せぇー!」
リタルダンド、ラレンタンドはだんだん遅く。
ダンドだかタンドだか知らないがどこまで遅くなるのか明記しておらぬ。
「だから、説明にも書いたように『流れで』や『いい感じに』なのにゃ」
「ふがーーーーーー!!」
どうして楽譜はこうも曖昧なものばかりなのだ。もう少しハッキリして欲しい。
妾が一人憤慨していると、カルカンが妾の肩をポンポンと叩いた。
「フッ……センスない人に音楽は無理にゃ」
「おい、喧嘩打ってるのかぇ?」




